Cases

株式会社PHONE APPLI 導入事例

初の試みとなる「テスト自動化」を成功に導く
アジャイル開発の知見を生かして「テスト実行」フェーズへと支援を広げる

法人向けSaaSアプリケーション「PHONE APPLI」シリーズでおなじみの株式会社PHONE APPLI様は、数年前からサービス開発のプロセスおよび体制を従来のウォーターフォール型からアジャイル型へと変革するとともに、ソフトウェアのテスト自動化にも取り組んでいます。これらの活動に対して高度な知見を持つベリサーブのエンジニアがサポートに加わり、さらなるサービス品質の向上を支援しています。具体的な施策や成果について、同社のサービス品質向上を担うクオリティデベロップメント(Quality Development:QD)の松山 大 様と小山 沙織 様にお話を伺いました。

株式会社PHONE APPLI

業種

システム開発、コンサルティング

導入サービス

テスト自動化運用支援

現場ご担当者インタビュー

松山 大 様

松山 大 様

クオリティデベロップメント(Quality Development:QD)の全体マネージャー

小山 沙織 様

小山 沙織 様

クオリティデベロップメント(Quality Development:QD)のマネージャー

QAではなくQD

──まずはPHONE APPLI様の主な事業内容を教えてください。

松山 当社はSaaS型ビジネスアプリケーションの開発や、働き方に関するコンサルティングなどを手掛けています。代表的なサービスである「PHONE APPLI PEOPLE」は、取引先の名刺情報や連絡先、従業員の属性情報などをクラウドアプリで一元管理し、それらを社内で広く共有することでコミュニケーションの円滑化や営業力の強化、人材の適正配置、業務効率化などを実現します。既に約3,500社に導入いただいており、この分野ではトップクラスのシェアを誇ります。

──その中で松山様と小山様はどのような業務を担当されているのでしょうか?

松山 「クオリティデベロップメント」(Quality Development:QD)というチームで、自社サービスのテストや品質向上に関わる業務に従事しています。このチームは「クオリティデベロップメント1」「クオリティデベロップメント2」「クオリティデベロップメント3」という3つのグループに分かれており、私はクオリティデベロップメント1のリーダーと、チーム全体のマネージャーを務めています。

小山 私はクオリティデベロップメント2のマネージャーを務めています。入社したのは松山と同じ2019年末で、ちょうど当社で品質管理に関するチームを新たに立ち上げようという機運が高まっていたころでした。

松山 それまでは品質保証(Quality Assurance:QA)を専門に扱う部署は存在しておらず、サービスを開発したエンジニア自身がテストを設計・実行するというやり方をとっていました。しかし徐々にサービスの規模が拡大し、組織の人員も増えていく中、従来のように「皆で作って、皆でテストする」というやり方では効率面で限界が生じてきました。

インタビュー風景3

PHONE APPLI様のオフィスは場所に縛られない働きかたとして「自然と、自由に、コミュニケーション」をテーマにスノーピークビジネスソリューションズのショールームも兼ねています。

──そこで新たにQAの専門部署を立ち上げることになったのですね。

松山 はい。それまで長らく続けてきたウォーターフォール型の開発プロセスをアジャイル型に改めるとともに、QAを専門に扱う組織を新たに立ち上げることにしました。ただし、一般的に言われているようなQAの考え方は、当社が扱うWeb系のサービスや、サブスクリプション型のビジネスモデルにはそぐわないと個人的に感じていました。

QAというと、製品をリリースする時点ですべての機能の品質を完璧に保証するというイメージが強いのですが、当社のサービスの場合は段階的に機能を拡張し、リリースしていくため、買い切り型の製品とは異なる品質の保証や管理の考え方が求められます。そこでアジャイルの設計、開発、リリースの全プロセスにおいて開発メンバー全員で品質を考え、作り込んでいく「クオリティデベロップメント」というコンセプトを打ち出し、この名称を冠した品質保証チームを2020年に発足させました。

テスト自動化ツール「MagicPod」を導入するも……

──クオリティデベロップメントのチームを立ち上げた後、テスト自動化の取り組みに着手されたそうですね。

松山  私は以前、ソフトウェアテストの事業会社で、さまざまな企業を支援してきました。そうした経験からWeb系サービスでテスト自動化を取り入れるのは極めて有効であり、かつ一般的になってきていることを認識していました。そこでPHONE APPLIのサービス群にもこれを導入し、テストの効率や品質を高めるべきだと考えていました。

インタビュー風景4

──具体的にはどのような施策を進めたのでしょうか?

松山  2020年にテスト自動化ツール「MagicPod」を導入するところからスタートしました。若手QAエンジニアの一人を専任にして、MagicPodをいろいろと試しながら、テスト自動化の具体的な方法や進め方を調査してもらいました。

しかしながら、いざ本格的な運用へ落とし込もうとしたとき、壁にぶつかりました。その若手エンジニア自身はある程度ツールを使いこなしていたのですが、それを仕組み化して他のエンジニアに横展開するにはハードルが高く、自分たちだけではどうすることもできない状況でした。

──その課題をどのように解決したのでしょうか?

松山  MagicPod社に相談したところ、テストシナリオ設計やスクリプト構築、その後のスクリプトのメンテナンスといった作業を専門家が請け負ってくれる運用支援をベリサーブが行っていると聞きました。当社のようにテスト自動化のノウハウが不足する企業にとってはまさに“渡りに船”で、すぐに飛び付きました。

そうしてやってきた専門家がベリサーブのエンジニアだったのです。この方がとても優秀で、テスト自動化の仕組みをチーム全体に展開できるようしっかり整備してくれました。加えて、後々のメンテナンス性を考慮した形に構造化する作業も。これらを半年から1年ほどかけて取り組んでくれました。

インタビュー風景5

小山  本当にしっかりやっていただいていたので、私たちもつい甘えていろいろとお任せすることになってしまいました。最終的にはベリサーブからもう一人の方にも入っていただき、当社の若手エンジニアとの3人体制でテスト自動化の基本的な仕組み作りを進めてもらいました。

──ベリサーブ主導でテスト自動化に取り組んだ結果、具体的にどのような成果が出ましたか?

松山  既にある程度のテストケースを自動実行できるようになっています。当社は月1回のペースでサービスをリリースしているのですが、その際に行うテストで検出・修正した不具合のうち約20パーセントはテスト自動化によって発見したものです。この割合を今後どんどん増やしていきたいです。実際には以前のように人力でテストを行う習慣がまだ一部で残っているので、それらを徐々になくしながら、戦略性の高い仕事により多くのリソースを投入できるようにしたいです。

──テスト自動化に関して、具体的な計画や目標はお持ちですか?

松山  サービスのリリースごとに行うテストのうち、新機能に関するテストケースは従来通り手動で実行してもいいと思いますが、過去に実装した機能のリグレッションテストに関しては、いずれはほぼ自動で回せるようにしていきたいです。できれば2024年度末までには、そのような体制を構築できればと考えています。

アジャイル開発の知見を持つエンジニアが不可欠だった

──現在、テスト自動化とは別にテストの実行フェーズにおいてもベリサーブの支援を受けていますね。

松山  元々は別のテストベンダーに協力を仰いでいました。その会社には以前から当社のテスト全般をお願いしていたため、ウォーターフォール型の開発プロセスにおけるテストに関しては習熟されていました。しかし2020年に開発プロセスをウォーターフォールからアジャイル型にシフトして以降、新しいやり方になかなか適応できずにいたのです。そこで、今後アジャイルの手法を社内に定着させるためにも、アジャイルの品質管理に長けたエンジニアに入っていただいたほうが得策だと判断しました。

インタビュー風景6

オフィス内には大きなキャンピングテントがあり、打ち合わせスペースになっている

──そこでベリサーブを選ばれた理由は何ですか?

松山  既にテスト自動化の枠組み作りではベリサーブにお世話になっていたため、テストの実行フェーズの支援についても相談したところ、アジャイルに詳しいエンジニアに担当していただけることになりました。現在、社内には「スクラム」の手法に則ってアジャイル開発を進めているチームが6つほどありますが、それぞれのチームにベリサーブのエンジニアが入っています。

──成果はいかがですか?

松山  実はテストの実行フェーズ支援はまだ数カ月しか経っておらず、具体的な効果はきちんと測定できていないのが現状です。ただし、期待感は強いです。当社はこれまで長らくウォーターフォール型の開発を続けてきたため、開発現場にアジャイルの文化がまだ十分に根付いているとは言い難い状況なのですが、各チームにベリサーブのエキスパートに入っていただくことで、現場のアジャイルに対する理解がより深まるのではないかと考えています。

これからも品質活動の大切なパートナーとして

──テスト自動化とテスト実行においてベリサーブの支援を受けたことで、業務の在り方はどのように変わりましたか?

松山  個人的にはストレスがかなり軽減しましたね。以前はアジャイルの理念や世界観を理解しているエンジニアがクオリティデベロップメント内にほとんどいなかったので、なかなか話が通じずに苦労していました。しかし、ベリサーブのエンジニアの方々は皆、アジャイルに対する共通認識があるため、いちいち基本的な事柄から説明しなくともすぐ本題に入れます。スムーズにコミュニケーションが取れるようになったことで、今後さらにアジャイルの文化が社内に根付いていくはずだと手応えを感じています。

小山  ベリサーブのエンジニアは、それぞれが高い専門性をお持ちなのはもちろんのこと、常に前向きな提案やフィードバックをしてくださいます。例えば、何か課題が見つかったときも、単に「こんなことで困っています」という相談ではなく、「こうしたほうがいいのではないか」「こうしたいと考えている」といった具合に、具体的な改善案を示してくれるので大変助かっています。

インタビュー風景7

──今後はクオリティデベロップメントチームをどのような方向に導いていきたいとお考えですか?

松山  コロナ禍以降、当社では大々的にリモートワークを導入し、現在は週に少なくとも1日は出社しましょうという形にしています。表面上、日々の業務は問題なく回っているのですが、かつてのように直接顔を合わせて仕事を行うスタイルから、テキストチャットを中心にやり取りするスタイルに移行したことで、些細なコミュニケーションの行き違いがたびたび起こるようになってしまいました。

リモートワークを導入した会社の多くが同じような課題に直面していると思いますが、私たちのチームとしてもこれを克服するためのマネジメントの在り方を模索しているところです。

具体的な解決策はまだ見えていませんが、とにかく現場とこれまで以上にこまめにコミュニケーションを取るよう心がけています。もちろん、ベリサーブともこれまで以上に密に連携しながら、クオリティデベロップメントの取り組みを進化させていきたいです。

ぜひ引き続き、ベリサーブがお持ちの高度な知見と抱負なノウハウを生かした支援をお願いできれば嬉しいです。

──ありがとうございました。

インタビューにご協力いただいた企業様

社名 株式会社PHONE APPLI
URL https://phoneappli.net/

株式会社PHONE APPLI