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株式会社アンドパッド 導入事例

プロダクトの増加でスプレッドシートによるテスト管理は困難に…
「QualityForward」導入でテスト業務全般の効率化を実現

建築・建設向けプロジェクト管理サービス「ANDPAD」の開発・運営元として知られる株式会社アンドパッド様では、かつてスプレッドシートを使ってソフトウェアテストの管理業務を行っていました。しかし、作業効率や管理品質などの面で多くの悩みを抱えていたため、ベリサーブのテスト管理ツール「QualityForward」を導入。その結果、テスト管理にまつわる課題の大半を克服したといいます。QualityForward採用の背景や過程、具体的な成果などについて、同社開発本部 QCチームの冨士川 護 様にお話を伺いました。

株式会社アンドパッド

業種

ソフトウェア

導入サービス

テスト管理ツール「QualityForward」

現場ご担当者インタビュー

冨士川 護 様

冨士川 護 様

同社開発本部 QCチームリーダー

複数プロダクトの品質の管理・制御を担う「QCチーム」

──まずはアンドパッド様の事業内容について教えてください。

冨士川 アンドパッドは、建築・建設業向けのプロジェクト管理サービス「ANDPAD」を提供する会社です。ANDPADは、建築・建設業界に特化し、施工管理から顧客管理、営業管理、原価管理に至るまで、経営と現場に必要な情報をクラウドで一元管理でき、現場からスマートフォンで簡単に操作できるインターフェースを備えています。お客様の経営改善や業務効率化に大いに役立てていただいています。
利用社数は18万社ユーザー数47万人を超えて、6年連続で国内シェアトップを獲得しています。
※『建設業マネジメントクラウドサービス市場の動向とベンダシェア(ミックITリポート2023年10月号)』デロイト トーマツ ミック経済研究所調べ

──ANDPADはどのような体制の下で開発されているのでしょうか。

冨士川 ANDPADは10以上のプロダクトに分かれていて、それぞれの開発チームがアジャイル開発などの手法をチームごとの裁量で取り入れ、新規および既存の機能強化に取り組んでいます。

──その中で冨士川さんはどのような役割を担っているのでしょうか。

冨士川 私は現在、製品の品質の管理・制御を役割として担うQC(Quality Control)チームのリーダーを務めています。このチームには多数のメンバーが所属していて、品質についてのスペシャリストとして各開発チームにそれぞれ数人ずつ入り、テストの設計や実行などの業務に当たっています。

ちなみに、私がアンドパッドに中途採用で入社した2021年7月当時は、まだQCチームは今よりも小さい規模でした。しかし、その後プロダクトがどんどん増えたことで、開発速度をより早めると同時に、品質もいっそう担保する必要が出てきたため、メンバーを増員していきました。

インタビュー風景1

スプレッドシートを使ったテスト管理に難あり

──「QualityForward」を導入する以前は、どのような方法でテストを管理されていたのでしょうか。

冨士川 スプレッドシートで表を作り、そこに各テストケースの内容などを記載して管理していました。プロダクトの数や規模が小さいうちはそのやり方でも運用できていたのですが、プロダクトの種類や機能が増大し、それに伴いテストケースの数も増えてくると、スプレッドシートだけでテストの進捗を把握するのが難しくなってきました。

また、当社ではQAエンジニアだけでなく開発担当のエンジニアが自動テストとは別のQAのレイヤーのテストを実施したり、当社のベトナムチームでもテストを実施したりしています。このようにさまざまな職種や立場のメンバーが多数テストに参加するようになると、なおさら各人のテスト実施状況をスプレッドシートだけで管理するのが困難になりました。

──テストの進捗状況を把握するために、担当者ごとに分かれているスプレッドシートを多数管理しなくてはならなかったのですね。

冨士川 その通りです。進捗状況を調べるには、各プロダクトや担当者ごとに分かれている多数のスプレッドシートの中から適切なものを選んで、該当箇所を一つ一つ探し当てなくてはならず、かなり煩雑でした。場合によっては担当者に直接状況を確認していたのですが、これが不十分なためにテスト結果の確認漏れが生じる恐れもありました。

さらにはベトナムチームとテストケースをやり取りするために、日本語版のスプレッドシートとベトナム語版のスプレッドシートをそれぞれに作成する必要もありました。

加えて、スプレッドシートの中に集計関数を埋め込んでいたのですが、ごくまれに計算式が間違っていて集計結果がおかしくなってしまったり、スプレッドシートのコピーを繰り返すうちに関数が壊れてしまったりするようなことも起きていました。

──そのような課題を解決するために、どのような対策を講じていたのでしょうか。

冨士川 私が入社する前にテスト管理ツールを試験導入した実績があったそうなのですが、その時は現場の業務にうまくフィットせず、結局スプレッドシートの運用に戻ってしまったという経緯がありました。そのため社内ではその手のツールに対して懐疑的な意見もありました。

管理効率の高さに加えて、操作性や多言語対応なども決め手に

──そうした中、どのような経緯で「QualityForward」のことをお知りになったのでしょうか。

冨士川 connpassでソフトウェア品質に関するセミナーに参加した際に、ベリサーブからQualityForwardの紹介がありました。それまではテスト管理ツールに興味を持っていませんでしたが、「このツールならわれわれが抱えている課題を解決できるかもしれない」と考え、まずは私自身でトライアル利用してみることにしました。これが、2023年2月のことです。
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https://connpass.com/

──トライアルでは具体的にどのような点を重点的にチェックされたのでしょうか。

冨士川 connpassのセミナー時に製品紹介があったので、大まかな使い勝手はイメージできていました。実際に普段運用しているテストケースをQualityForwardにインポートしたり、私の手でテスト結果を入力したりしながら、画面の見た目や操作性などを確認しました。その結果、当社での運用にも十分耐え得るツールだと判断しました。

また、当社特有のテストプロセスに対応できるかについても確認しました。例えば、それまで当社ではiOSのバージョンごとにテストケースを分けて別々のスプレッドシートで管理していたのですが、これと同じ管理方法がQualityForwardでも実現可能かどうかをチェックしました。さらには、ベトナムチームとテストケースをやり取りする際の多言語対応についても確かめました。

──多言語対応は、具体的にどのようなことを行ったのでしょうか。

冨士川 ブラウザーソフト「Google Chrome」の翻訳機能を使い、ブラウザー上に表示したQualityForward画面を自動的にベトナム語に翻訳させることで対応しました。これにより、わざわざ日本語版とベトナム語版のスプレッドシートを個別に管理する必要がなくなり、シンプルなテスト管理が実現できると考えました。ちなみにこうしたQualityForward運用の細かなノウハウは、当社のテックブログでも公開しています。

インタビュー風景2

テスト全般にかかる工数は約3割減

──トライアルを終えた後、本番導入はどのように行われましたか。

冨士川 約3カ月間のトライアルを経て、QualityForwardのメリット、目的、比較などをまとめ、費用対効果などと合わせて導入に向けた準備を進め、23年6月に正式契約を結び、本番導入しました。まずは数あるプロダクトの中から、「ANDPADチャット」の開発チームに対象を絞ってQualityForwardを活用してもらうことにしました。

※チャットチームが導入経緯をまとめたテックブログの記事(検証管理ツール「QualityForward」導入計画

元々このチームはテストの規模が大きく、新しいQAツールの導入にも協力的なことから、ここで成功事例を作ってからそのノウハウを生かして他のチームに横展開していこうと考えたわけです。

具体的には、作業時間に余裕がありそうなテストから少しずつQualityForwardを取り入れていきました。逆に時間的に余裕がないテストに関しては、ひとまず使い慣れたスプレッドシートで作業してもらうようにしながら、適材適所でQualityForwardを使いました。2〜3カ月後には、少なくとも新規に作成するテストケースに関しては、ほぼ全てをQualityForward上で管理できるようになりました。

──現場のメンバーには、どのようにQualityForwardの使い方をレクチャーしていったのでしょうか。

冨士川 私自身がトライアルで一通りの使い方を習得できていたので、その内容をメンバーに伝えるだけで皆すぐ使いこなせるようになりました。ベトナムチームのメンバーも同様で、極めてシンプルな指示だけですぐに活用していました。メンバーへの展開で苦労した記憶はほとんどないですね。

──QualityForwardの導入後、テスト業務はどのように変わりましたか。

冨士川 導入以前はテストの進捗状況を把握するのにかなり手間と時間がかかっていました。しかし、現在はすべての担当者の進捗状況が一目で把握できるようになったため、テスト実施の作業遅れなどの兆候を発見して担当者に直接確認するなど、問題が深刻化する前にいち早く対処できるようになりました。

また過去のテスト実施状況も、QualityForwardならすぐにさかのぼって確認できます。「前にやったあのテスト、確かいったんNGになっていたけれど、結局どうなった?」といったことがあると、前はスプレッドシートを掘り返す必要がありましたが、今は素早く情報を確認し、適切に対応できています。

──テスト結果の確認漏れなどの不安もなくなったということですね。

冨士川 そうですね。先ほども述べたように、当社のテスト作業はそのプロダクトのQAエンジニアだけではなく、他のプロダクトのエンジニアやベトナムチームのQAエンジニアなど、さまざまな部署やロケーションに分かれて分担しています。そのため、これまではテストの実施状況を確認するために個別にコミュニケーションを取る必要があり、大きな負担でした。しかしQualityForwardの導入後は、すべての作業状況を見たいタイミングで誰もが参照できるようになったので、無駄なコミュニケーションが減り、業務効率が大幅に向上しました。

また、テストの実施状況や結果の集計・分析はQualityForwardが自動的に行ってくれるため、スプレッドシートに仕込んでいた集計関数にまつわる問題も一気に解決できました。これらの効果をすべて合わせると、テスト全般にかかる工数を3割ほど削減できているのではないかと実感しています。

インタビュー風景4

テストに関連するあらゆる情報をQualityForward上に集約

──QualityForwardを運用するに当たり、何か工夫されていることはありますか。

冨士川 スプレッドシートの操作性に慣れているメンバーも少なくないため、そうした人に向けてはスプレッドシートのひな型を用意して、テストを設計してもらっています。そうして出来上がったスプレッドシートをExcelシート形式に変換して、QualityForwardにインポートすることで運用しています。

後は、プロジェクト管理ソフト「Jira」やコミュニケーションツール「Slack」を社内で使っているため、そこでのやり取りをQualityForwardのテストスイートのコメント欄に記入しています。こうすることで各テストケースに関連するすべての情報をQualityForward上に集約し、「そもそもこのテストケースはどういう経緯で設けられたのか」という経緯も容易にたどることが可能になります。

──今後はどのようにQualityForwardを活用していきたいとお考えでしょうか。

冨士川 現時点ではまだ、QualityForwardを使ってテストを管理しているのは一部の開発チームだけなので、今後はぜひ他のチームにもQualityForwardを横展開していければと考えています。チームごとに開発やテストの進め方、文化は異なりますから、一律に同じツールの利用を強制することはできません。しかし、将来的に他のチームでテスト管理の課題が持ち上がった際には、すぐにQualityForwardの利用を提案できるよう、今のうちに運用ナレッジを蓄積、整理しておきたいですね。

──ありがとうございました。

インタビューにご協力いただいた企業様

社名 株式会社アンドパッド
URL https://andpad.co.jp/

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