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DNNとは?機械学習や画像認識との関係も紹介

DNNとは?機械学習や画像認識との関係も紹介

AIや機械学習の話題を目にする機会が増えた今、その中心技術として必ず登場するのが「DNN(ディープニューラルネットワーク)」です。DNNは、画像認識や音声認識、自然言語処理など、私たちの身近なサービスの裏側でも広く活用されています。

DNNについて「名前は聞いたことがあるけれど、仕組みや他の技術との違いはよく分からない」という方も多いのではないでしょうか。

この記事では、DNNの基本構造や役割、CNNやRNNとの違い、そして実際にどのように社会で使われているのかを分かりやすく解説します。

DNN(ディープニューラルネットワーク)とは?

DNN(ディープニューラルネットワーク)とは、人間の脳をヒントに作られた「ニューラルネットワーク」を多層に発展させた仕組みです。

DNN自体は1980年代から研究されていましたが、コンピューター自体の性能向上や大量データの活用が可能になったことでDNNが実用的になり、一気に注目を集めるようになりました。

DNNの最大の特徴は、「特徴量の抽出」を自動で行えることです。従来の機械学習では、画像や音声を扱う際に「どんな特徴を取り出せばよいか」を人間が設計する必要がありました。しかしDNNでは、入力されたデータを何層もの処理を通じて抽象化していくことで、機械が自ら有用な特徴を学習できるようになりました。

その結果、画像認識、音声認識、自然言語処理など、多様な分野で従来を大きく上回る精度での学習を実現しました。今では医療、金融、製造業など幅広い産業で実用化が進み、AIを支える基盤技術の一つとなっています。

図1:ニューラルネットワークのイメージ(DALL-E-3で生成)
図1:ニューラルネットワークのイメージ(DALL-E-3で生成)

DNNの基本構造と仕組み

DNNは、幾つもの「層(レイヤー)」を順番につなげてデータを処理していく仕組みを持っています。情報が入力から出力へと伝わる中で、段階的に「抽象化」や「特徴の整理」が進むことが大きな特徴です。

ここでは、代表的な構成要素を見ていきましょう。

入力層・隠れ層・出力層の役割

DNNは大きく分けて 入力層・隠れ層・出力層 の三つで構成されます。

層の種類

役割・特徴

入力層

最初にデータが入ってくる場所。画像であればピクセル値、音声なら波形データなど、モデルが扱う数値をそのまま受け取る。

隠れ層(中間層)

入力されたデータをさまざまな形に変換しながら特徴を抽出する層。層が多いほどより複雑なパターンを学習できる。画像認識では「線 → 角 → 形 → 全体の物体」と段階的に特徴を捉える。

出力層

最終的な予測結果を返す層。分類問題では「犬か猫か」といったラベルを出力し、回帰問題では数値の予測値を返す。

このように、DNNは「入力 → 特徴抽出 → 出力」の流れでデータを処理していると考えるとイメージしやすいでしょう。

活性化関数(ReLU、Sigmoidなど)の役割

層の中でデータを処理する際、単なる足し算・掛け算だけでは「線形的な変換」しかできず、複雑なパターンを捉えることができません。そこで使われるのが 活性化関数 です。

活性化関数を通すことで「非線形性」が導入され、DNNはより高度な表現や複雑なデータ構造を学習できるようになります。代表的なものには以下があります。

代表例

特徴

ReLU(Rectified Linear Unit)

0より大きい入力はそのまま通し、0以下は0にするシンプルな関数。計算が速く、現在のディープラーニングで最も多用されています。

Sigmoid

入力値を0〜1の範囲に変換する関数。確率的な解釈がしやすい一方で、深い層では勾配が小さくなり学習が進みにくいという欠点があります。

Tanh

出力を-1〜1に収める関数。Sigmoidに似ていますが、出力の平均が0に近いぶん学習効率がやや改善されます。

 これらの活性化関数のおかげで、DNNは「単なる数式の計算機」ではなく、「複雑なパターンを理解できるモデル」として機能しています。

図2:活性化関数(Sigmoidのグラフイメージ)
図2:活性化関数(Sigmoidのグラフイメージ)

DNNとCNNやRNNの違い

DNNは多層のニューラルネットワークを総称する言葉ですが、その中には特定の課題に特化したモデルも存在します。

代表的なのが CNN(畳み込みニューラルネットワーク) と RNN(再帰型ニューラルネットワーク) を用いたモデルです。

CNN(Convolutional Neural Network)

主に画像認識で使われるモデルで、畳み込み層を使って画像の局所的な特徴(線や模様など)を効率的に抽出します。物体検出や顔認識など、ビジュアル系のAIで欠かせない技術です。

RNN(Recurrent Neural Network)

時系列データを扱うのに強みを持つモデルです。過去の情報を保持しながら処理を行えるため、音声認識や自然言語処理など、時間的なつながりを考慮する必要があるタスクに適しています。

モデル

構造の特徴

得意分野・用途

DNN

全結合層を多層に積み重ねる構造

一般的な分類や回帰タスクなど幅広いタスク

CNN

畳み込み層・プーリング層で局所特徴を抽出

画像認識、物体検出、顔認識

RNN

再帰結合を持ち、過去の状態を記憶

音声認識、文章解析、翻訳

DNNは中間層が複数あればDNNになります。CNNやRNNは1層の中で使用される層の種類です。

このため、CNNとRNNは、DNN内で使用される技術の一つと理解してください。

DNNとハイパーパラメータの関係

DNNを学習させるとき、その性能を大きく左右するのが ハイパーパラメータ です。

ハイパーパラメータとは

ハイパーパラメータとは、学習を始める前にあらかじめ設定しておく値のこと。モデル内部で自動的に調整される「重み」や「バイアス」とは異なり、人間が外側から決める必要があります。

主なハイパーパラメータには次のようなものがあります。

項目

概要

学習率

パラメータをどのくらいの幅で更新するかを決める値。大き過ぎると不安定、小さ過ぎると学習が進みにくい。 

0.001〜0.01

バッチサイズ

一度に処理するデータ数。小さいと安定するが遅く、大きいと効率的だが汎化性能に影響することがある。

32, 64, 128

層の数・ユニット数

モデルの複雑さを決める。増やすほど表現力は上がるが、過学習や計算コスト増のリスクがある。

3〜100層

エポック数

全データを何回繰り返して学習するか。多過ぎると過学習になる可能性がある。

10〜100回程度

最適化アルゴリズム

パラメータを更新する方法。

SGD, Adam など

 設定次第で学習スピードや予測精度が大きく変わるため、ハイパーパラメータの設計は非常に重要です。

ハイパーパラメータチューニングと自動化

最適なハイパーパラメータの組み合わせを見つけることをハイパーパラメータチューニングと呼びます。これはDNNの性能を引き出すためのステップです。 

代表的な方法には以下があります。

グリッドサーチ

候補値の全てを総当たりで試す

ランダムサーチ

ランダムに値を選びながら効率的に探索する

ベイズ最適化

過去の探索結果を基に「次に試すべき値」を推定する

さらに近年は、OptunaScikit-learn などの自動化ツールも広く利用されており、実務における効率化につながっています。

DNNを一から構築する流れは、基本的に次のようなステップで進みます。Pythonと深層学習用ライブラリ(TensorFlowPyTorchなど)を使えば、比較的シンプルに試せるのも魅力です。

【実例】DNNはどのように活用されている?

DNNは、すでに私たちの生活や産業の中で幅広く活用されています。

ここでは代表的な三つの分野を見ていきましょう。

画像分類

もっとも身近な応用の一つが 画像分類 です。

例えば、手書き文字を数字として認識する「郵便番号の自動読み取り」や、写真の中の「猫と犬を判別する」といったタスクです。

従来は人間が特徴を設計する必要がありましたが、DNNを使えば大量の画像データから自動で「線 → 角 → 形 → 物体」と階層的に特徴を抽出できます。

その結果、画像検索やSNSでの自動タグ付けなど、身近なサービスでも高精度な分類が実現しています。

図3:DNNで犬と猫を識別するイメージ(DALL-E-3で生成)
図3:DNNで犬と猫を識別するイメージ(DALL-E-3で生成)

物体検出

DNNは「画像の中に何が写っているか」だけでなく、「どこにあるか」を特定する 物体検出 にも応用されています。

代表例は自動運転のカメラ映像解析です。歩行者や信号、標識などをリアルタイムで検出し、安全な走行へとつなげています。

YOLO(You Only Look Once)やSSD(Single Shot Detector)といったモデルは、DNNを基盤にした高速かつ高精度な検出を実現しており、工場での異常検知や監視カメラの映像解析にも利用されています。

医療診断

医療分野でもDNNの活用は進んでいます。

レントゲンやCT、MRIなどの医用画像から病変を検出するAIは、医師の診断を補助するツールとして注目されています。例えば、皮膚がんの早期発見や糖尿病網膜症の診断支援では、専門医と同等レベルの精度を示す研究も発表されています。

膨大な症例データを学習できるDNNだからこそ、人間の経験則を超えたパターンを見つけられる点が大きな強みです。

DNNの特徴と今後の展望

DNN(ディープニューラルネットワーク)は、複数の層を通じてデータから特徴を自動的に抽出し、従来の手法では難しかった高度なパターン認識を可能にする技術です。

画像認識や音声認識、自然言語処理など、今や多くの分野でAIの中心担っています。

今後はDNNをベースに、医療や製造業など社会課題の解決に直結する応用がますます広がっていくものと期待されています。

DNNはAIを学ぶ上での基本かつ最重要の技術です。初めて学ばれる方は、まずは簡単なデータセットを使った実装から試し、徐々に理解を深めていくとよいでしょう。

図4:DNNの未来イメージ(DALL-E-3で生成)
図4:DNNの未来イメージ(DALL-E-3で生成)
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