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座談会:ソフトウェア品質とアジャイル開発、ベリサーブ函館の現在地

株式会社イデソン代表誉田 直美氏

ソフトウェア品質の専門家として、30年以上にわたって大手電機会社で活躍。 ウォーターフォールモデル開発およびアジャイル開発の両方に精通し、現場での豊富な経験を保有している。 近年では、AIシステムの品質保証にも関わる。 単なる知識にとどまらず、現場の事情を考慮した実践的な品質保証が特徴である。 2020年、 (株)イデソン設立。 ソフトウェア品質に関するコンサルティングを中心に活動している。

株式会社ベリサーブ函館品質ソリューション事業本部 ITサービス部 マネジャー/製品サービス部 マネジャー青山 雄介

2011年株式会社ベリサーブ入社。電子地図開発にて品質管理体制の強化やテストプロセスの改善に取り組む。2024年より株式会社ベリサーブ函館へ出向し、プロジェクトマネジャーを務める。

株式会社ベリサーブ函館品質ソリューション事業本部 モビリティ部 マネジャー上里 良司

2016年株式会社ベリサーブ沖縄テストセンター(現株式会社ベリサーブ沖縄)へ入社。車載ナビゲーションをはじめ車載系システムの評価プロジェクトにてマネジャーを務める。2025年よりベリサーブ函館へ出向し、車載系評価プロジェクトにてマネジャーを務める。

株式会社ベリサーブ函館品質ソリューション事業本部 製品サービス部 サブマネジャー蟹谷 直矢

ソフトウェアの品質保証・テスト事業を行う企業にて、スマートフォンやPC向けアプリの検証リーダーを務めた後、株式会社ベリサーブ函館に所属を移し、組み込みソフトウェアのテストリーダーを経て、現在は複数プロジェクトでサブマネジャーを担当。

株式会社ベリサーブ函館品質ソリューション事業本部 モビリティ部吉田 亮

組み込み系アプリケーション等のソフトウェア開発業務に従事した後、2024年に株式会社ベリサーブ函館に入社。品質部門において車載系ソフトウェアの検証業務に従事。

「DXと生成AIの進展により、品質保証と開発現場の在り方が変化する中、株式会社ベリサーブ函館(以下、ベリサーブ函館)のオフィスにて、ソフトウェア品質とアジャイル開発をテーマとした座談会が開かれた。株式会社イデソン代表の誉田直美氏を囲み、現場で奮闘するエンジニアなどが率直な課題や疑問をぶつけた。

製品視点を持ち、日頃から訓練すること

——最初にベリサーブ函館のメンバーから自己紹介をお願いできますか。

青山:2024年3月に株式会社ベリサーブから子会社のベリサーブ函館に出向し、プロジェクトのマネジメントなどを支援しています。現在もベリサーブ函館の皆さんと一緒にプロジェクトの立ち上げに携わる日々を過ごしています。

上里:モビリティ部のマネジャーを務めています。私は沖縄県出身でして、以前は株式会社ベリサーブ沖縄の事業拠点で5年ほどモビリティ系のプロジェクトマネジメントに関わっていました。ベリサーブ函館にはそうした領域の立ち上げ支援という形でやってきました。

蟹谷:ベリサーブ函館が設立して1カ月後に入社しました。前の職場でもテスト業務を行っていましたが、ベリサーブ函館にはテスト未経験者で入社してくる人が多いため、そうした方々のフォローをしながら仕事をしています。

吉田:2024年11月に入社しまして、それ以前は30年ほどIT関連の会社に勤めていました。誉田さんがNEC出身ということですが、かつて我孫子の事業所と取引があり、主に交換機の事業に携わっていました。当時の品質保証部の方々に細かくバグだしを指示されたのは良い思い出です(笑)。

——ありがとうございました。それでは本題に入りますが、口火を切ってどなたか誉田さんに質問がある方はいますか?

上里:では、よろしいですか。私たちは部品レベルのテストを担当することが多く、最終的な製品を見る機会が少ないのが課題です。特に車載系のテレマティクス関連では、実際の「箱」しか見えない中でメンバーがテストを進めている状況で、モチベーション維持が難しいと感じています。

現場では進捗に追われがちで、リーダーも「今はそういうことやらなくていいから、ここだけやって」となりがちです。そういう中でマクロ視点を持ち続けるのは確かに困難です。どうすればメンバーにマクロ視点の品質を伝えていけるのでしょうか。

誉田:それは製品品質の観点で見ることに尽きると思います。品質を確保するというのは、単に不具合をなくすことではありません。つまり、製品(=マクロ)、部品(=ミクロ)という二つの視点で常に議論することが重要なんです。

ただし、車の開発は仕様変更による作り直しが多いという特徴があります。少し仕様変更されたものが何度も出てくる。同じようなテストを繰り返していると、どうしても作業的な仕事になってしまう。だからモチベーションの維持が悩みになるのだと思います。そこで大切なのは、「製品について議論する訓練」が必要だということです。発注先の方と(部品品質ではなく)製品全体について議論することはあまりないかもしれませんが、そういう機会を作ることはやはり重要なのではないかと思います。

青山:確かに、顧客の窓口の方も「上から言われたから」という指示だしが多く、製品について聞いても「言われただけなんで」という回答が返ってくることがあります。それでも諦めずに巻き込んでやっていくしかないのでしょうね。社内だけでも製品の目指すべき姿を議論する文化を作ることから始めてみるのがいいかなと感じました。

誉田:私は本当に訓練だと思いますよ。そしてこれは日常的にやるものです。

データを「使う」文化に

青山:続いての質問です。私は新卒でベリサーブに入り、品質を確保する上で開発プロセスの重要性は理解していましたが、そのプロセス自体が本当に正しいのかなどを、未経験者の多い現場へ浸透することが非常に困難でした。そこで、構築されている開発プロセスに対してどのように定量化・見える化して改善を促すべきでしょうか。

誉田:それはよくある問題ですね。重要なのは計測したデータを「使う」ということです。後からつじつまを合わせてデータを作るのは最悪で、それならデータは収集しない方がいいくらいです。データは収集していたけれども、そのデータを何に使うのかというイメージが湧いていなかったというのもありそうですね。

青山:そうですね。結局、データ収集はプロジェクトの稼働中にはなかなかできません。目の前の業務に追われ、きちんとしたデータの収集や、その改善に対するアクションまで手が回らなかったという反省があります。

誉田:実際のデータを使って「こういうことが分かるのだ」と示すと、「なるほど」となるわけです。かつて私がいた組織では、毎週データで報告することが必須でした。例えば、火曜日の昼12時までにデータを報告し、それを使って分析し、翌日の進捗会議に臨む。それをやらないと怒られる(笑)。だから必ずデータを使うようになるのですよ。このような取り組みを続けていき、20年かけて作り上げたのが「品質会計」というソフトウェア品質管理手法でした。

でも、今はツールが充実しているので、昔に比べればやりやすいはずです。これも訓練ですよ。20年とは言いませんが、10年くらい継続してデータを使った改善を続けることでデータを活用することが文化になるはずです。

アジャイル開発導入の現実と課題

吉田:最近では自動車業界にもアジャイル開発が浸透しつつありますが、現場では何をすべきか分からない状況があります。どのように進めていけばよいでしょうか。

誉田:誰かが先陣を切ってやらないと変わりません。私もNECにいた時、アジャイルで品質会計をどうやるかという質問を受け、ガイドを作ったのですが誰も使いませんでした。正直、「なんだよ!」と思いながらも自分自身でアジャイル開発チームを組成し、実行しました。うまくいったらいったで「(開発者でなく)QAの誉田さんが先にやるなんておかしい」などといろいろと言われましたが、結果的にそれが全社に広まるきっかけになりました。やはり誰かがやらないといけないのですよ。

吉田:開発手法を切り替えると、そこに工数がかかってしまうじゃないですか。それを気にしてしまうのです。

誉田:分かりますよ。そこは投資ですよね。とはいえ、最初に失敗してしまうと次に進めなくなるから、うまくいくための慎重さは必要ですね。

青山:私は過去に顧客先で“なんちゃってアジャイル”を経験しました。品質保証側が開発工程に入り込めない状態なのに、ただ短期間で開発プロセスをイテレーティブに回すことを目的に、次々とテスト部分だけを切り出して、実行するように言われました。正直、何をやっているのか分からない状況でした……。

誉田:それは厳しいですね。ただ、世の中的にとても多いパターンですよ。失敗かどうか判断が付かないまま進んでしまうため、結果的にものすごい量を作ってしまい、1年たったらもう手が付けられない状態になってしまう。

テスト自動化に対する理解を促す

青山:アジャイル開発では都度、仕様変更が入る中で、テスト自動化の有効性が不明です。しかも顧客が求めるのは「フル自動化」なのです。それは現実的ではないのではと思うのですが、いかがでしょうか。

誉田:もともとアジャイル開発でのテスト自動化はテストコードの修正頻度が高く、製品コードよりもテストコードばかりを修正することが多い傾向があります。一方で車載系システムの開発状況から考えると、そのような意見が出るのも理解できます。アドバイスとしては、試作と製品開発を切り分けて、テスト自動化は製品開発フェーズで実施すればいいのではないでしょうか。

私が関わったプロジェクトでは、スプリントレビューの基準を変えていました。製品として出すときはカバレッジ100パーセントなど厳しい基準が必要ですが、試作では別にそこまで要りません。そういう切り分けで運用していました。

上里:テスト自動化に対するお客様の理解促進も必要だと痛感しています。テスト自動化はコストがかからないと思われている節がありますが、実際には環境整備や人材教育などにお金や時間というコストがかかります。

誉田:その通りですね。

蟹谷:テスト自動化というと、工数が減るから積極的に活用しようと考えるお客様が多いのですが、まずは準備が大切だということはあまり分かってもらえていないです。

青山:現場で困るのは、テスト自動化すると、テスト実行スピードが速くなって、人手がいらなくなると思われることです。そこだけ切り取るとコスト削減なのですが、環境整備をはじめとする初期コストについて抜けがちです。

誉田:テスト自動化の教育は重要ですね。後、テスト自動化といっても一般的には100パーセントを目指さない方が良いとされています。製品開発においてどこまでテスト自動化を進めるかの合意、環境、教育、この三つは当然必要です。

社外に出よう

誉田:いろいろとお話を伺っていると、人的ネットワークづくりに対する課題もあるようですね。社外とのつながりは本当に大事で、「これだったらあの人に聞けばいい」という確かな情報源を社外に持っていた方がいいです。

社外ネットワークを作る上で、イベントへの参加はぜひやった方がいいです。外に出ていくと絶対に世界が変わって見えます。社内用語だけで暮らしているのと、外の人に分かるように説明するのとでは全然違います。そういう経験をすると、自分がやっている仕事ってどういうことなのだろうと考えるきっかけにもなります。やはり視野を広げるのは必要ですよ。

それと、社外の方たちとの交流を通じて得た知識やノウハウを、自ら実践してみることで、成長につなげられるようになります。そうすることで、結果として品質を高めるための手段をネットワークから得られる、ということだってあるでしょう。

一同:はい。

誉田:今日のお話を聞いていて、皆さんが真剣に悩んで取り組まれているということがヒシヒシと伝わりました。それだったら、やれることはもっとたくさんありそうだなと思います。

大変なことだけれど、それってチャンスでもある。そう思ってやっていけば、きっとすごく伸びるのではないでしょうか。付いてくる人もたくさんいるはずですよ。ぜひ頑張ってください。

一同:ありがとうございました。

株式会社イデソン代表誉田 直美氏

ソフトウェア品質の専門家として、30年以上にわたって大手電機会社で活躍。 ウォーターフォールモデル開発およびアジャイル開発の両方に精通し、現場での豊富な経験を保有している。 近年では、AIシステムの品質保証にも関わる。 単なる知識にとどまらず、現場の事情を考慮した実践的な品質保証が特徴である。 2020年、 (株)イデソン設立。 ソフトウェア品質に関するコンサルティングを中心に活動している。

株式会社ベリサーブ函館品質ソリューション事業本部 ITサービス部 マネジャー/製品サービス部 マネジャー青山 雄介

2011年株式会社ベリサーブ入社。電子地図開発にて品質管理体制の強化やテストプロセスの改善に取り組む。2024年より株式会社ベリサーブ函館へ出向し、プロジェクトマネジャーを務める。

株式会社ベリサーブ函館品質ソリューション事業本部 モビリティ部 マネジャー上里 良司

2016年株式会社ベリサーブ沖縄テストセンター(現株式会社ベリサーブ沖縄)へ入社。車載ナビゲーションをはじめ車載系システムの評価プロジェクトにてマネジャーを務める。2025年よりベリサーブ函館へ出向し、車載系評価プロジェクトにてマネジャーを務める。

株式会社ベリサーブ函館品質ソリューション事業本部 製品サービス部 サブマネジャー蟹谷 直矢

ソフトウェアの品質保証・テスト事業を行う企業にて、スマートフォンやPC向けアプリの検証リーダーを務めた後、株式会社ベリサーブ函館に所属を移し、組み込みソフトウェアのテストリーダーを経て、現在は複数プロジェクトでサブマネジャーを担当。

株式会社ベリサーブ函館品質ソリューション事業本部 モビリティ部吉田 亮

組み込み系アプリケーション等のソフトウェア開発業務に従事した後、2024年に株式会社ベリサーブ函館に入社。品質部門において車載系ソフトウェアの検証業務に従事。

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