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自動車のADAS(エーダス)とは?自動運転との違いや車載機能など解説

自動車のADAS(エーダス)とは?自動運転との違いや車載機能など解説

現在、自動車業界は「CASE(Connected, Autonomous, Shared, Electric)」と呼ばれる百年に一度の大変革期にあります。その中で「Autonomous(自動運転)」への架け橋となる技術がADAS(先進運転支援システム)です。

かつては高級車限定の装備であったADASは、今では軽自動車から商用車に至るまで標準装備化が進み、社会の交通安全インフラとしての役割を担っています。国内でも高齢ドライバーによる事故防止や、国際的な安全基準への適合が急務となっています。

そこで本記事では、ADAS技術の仕組みや機能、その限界について解説します。

ADAS(Advanced Driver Assistance System:先進運転支援システム)とは?

それではADASの定義や、AD-ADASという合成語「AD(Autonomous Driving)自動運転」との関係などについて説明していきます。 

ADASの意味と目的

ADAS(先進運転支援システム)は、自動車に搭載されたデバイスが周囲を監視し、ドライバーの安全運転を物理的・情報的にサポートするシステムの総称です。読み方はエーダスです。

主な目的は以下の三つに集約されます。

  • 事故の未然防止:人的ミスをシステムがカバーし、衝突を回避する。
  • 被害の軽減:回避不能な衝突時に速度を落とし、乗員や歩行者のダメージを最小限にする。
  • 運転負荷の低減:高速道路の巡航や渋滞、駐車時のストレスを軽減し、疲労によるミスを防ぐ。

自動運転との違い(自動運転レベルによる定義)

 ADASと「自動運転」の境界線は、SAE(自動車技術会)によるJ3016国際規格に基づき、図表1のように定義されています。

レベル

名称

運転の主体 /監視

責任の所在

内容・機能例

レベル1

運転支援

人間

人間

加減速または操舵の片方を支援(例:自動ブレーキ)

レベル2

部分運転自動化

人間

人間

加減速と操舵の両方を支援(例:自動クルーズコントロール+車線維持)

レベル3

条件付自動運転

システム

システム(緊急時のみ人間)

特定条件下で全操作。緊急時のみ人間が交代

レベル4

高度自動運転

システム

システム

特定条件下でシステムが全操作を完結

レベル5

完全自動運転

システム

システム

場所や環境の制限なく、常にシステムが運転

図表1:SAEによる自動運転レベル

「ADAS」と呼ばれるのは一般的にレベル1および2までです。レベル2までは、システムが作動していても責任の主体は常に「ドライバー」にあり、周囲の監視責任が課せられます。レベル3以上は「自動運転システム」と呼ばれ、監視責任・運転操作主体がシステムへ移る大きな技術的・法的な責任分界点が存在します。

近年の普及状況

国内の新車における衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)の搭載率は、2021年からの新型車搭載義務化に先立ち、2019年時点ですでに93.7%(※)に達しており、現在は100%に近い水準まで普及が進んでいます。

衝突回避機能に加え、高齢ドライバーによる事故防止に大きく寄与する「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」の普及率も、2019年時点でも83.8%(※)と高い水準にあります。 

現在では、これら二つの機能に「車線逸脱警報装置」と「先進ライト」を加えた4機能を備える「サポカーSワイド」の普及が強力に推進されており、高齢者を含む全てのドライバーが安全に運転を継続できる社会を支える重要な基盤となっています。(※ 2019年8月時点 国土交通省推計値)

ADASの仕組みと構成要素

ADASは、人間の「目(認知)」「脳(判断)」「手足(操作)」に相当するプロセスをシステムで再現しています。

認知(目):センサーの役割と特徴

一つのセンサーで全ての環境を認知することは難しいため、複数のセンサーを組み合わせる「センサーフュージョン」技術が開発の主流となっています。

図表2に、代表的なセンサーを示します。

センサー種類

得意なこと

苦手なこと(弱点)

主な用途

単眼カメラ

物体識別(人、車、標識)、信号の色、白線認識

逆光、激しい雨、霧、夜間の遠方に弱い

自動ブレーキ、標識認識、LKA

ステレオカメラ

二つのレンズで距離を正確に測定(三次元計測)

筐体が大きく、システムコストが高い

障害物検知、自動ブレーキ

ミリ波レーダー

悪天候(雪、霧)に強い。遠方の相対速度測定

物体の形状特定や白線の検知、停止物体の判別

ACC、衝突警報、死角検知

LiDAR

極めて精密な3D空間把握。夜間でも形状認識可能

非常に高コストであり、降雪や霧での光の乱反射に弱い

高度なレベル2〜自動運転

超音波センサー

近距離(数m)の物体検知。透明なガラスにも反応

遠方の検知や走行中の風切り音ノイズ

駐車支援、踏み間違い防止

図表2:認知に用いられる代表的なセンサー 

判断(脳):ECUの役割

センサーから送られてくる情報をリアルタイムで統合・解析するのがECU(Electronic Control Unit)です。近年では、AIを搭載した高性能なSoC(System on a Chip)が採用され、複雑な交通状況を予測・判断します。

操作(手足):アクチュエーターの役割

ECUでの判断結果に基づき、アクチュエーターが車両を制御・操作します。図表3に、代表的なアクチュエーターを示します。

アクチュエーターの種類

役割

電子制御ブレーキ

自動で油圧を高め、制動を行う

電動パワーステアリング(EPS)

モーターで操舵トルクを発生させ、進路を修正する

電子制御スロットル

エンジン出力を調整し、加速や車間距離を管理する

図表3:制御・操作に用いられる代表的なアクチュエーター

ADASの主な機能

ADASには前述の多様なセンサーの組み合わせと制御によって運転を支援する機能があります。以下にて代表的な機能を紹介します。

衝突被害軽減ブレーキ(AEBS:Autonomous Emergency Braking System)

衝突被害軽減ブレーキとは、衝突の危険を検知した際に、システムが介入し、ブレーキ操作を行う安全機能です。図表4に、代表的な機能を示します。

代表的な機能

概要

前方監視

カメラやレーダーで先行車や歩行者を検知する

警告

衝突の危険がある場合、ディスプレイや音で通知する

予備制動

ブレーキの応答性を高め、軽く制動をかける

緊急制動

衝突不可避と判断した場合、最大制動力で作動し、停止または減速する

図表4:衝突被害軽減ブレーキの代表的な機能

車線維持支援(LKA:Lane Keep Assist)

車線維持支援とは、カメラが車線の白線を認識し、車両が車線の中央をキープするよう支援する機能です。システム構成に電動パワーステアリング(EPS)を含みます。図表5に、代表的な車線維持支援を示します。

代表的な機能

概要

車線認識

車両の前方カメラが、道路の白線や黄線などの車線境界線を検知する

逸脱検知

システム側で車両が車線を越えそうになる動きを検知する

警告(必要に応じて)

車線逸脱の危険がある場合、ステアリングホイールの振動、ブザー音、メーター表示などでドライバーに警告する

操舵支援(アシスト)

警告後もドライバーが対応しない場合、電動パワーステアリング(EPS)がステアリングを操作し、車両を車線中央に戻す

ドライバーによる制御

LKAはあくまで運転支援であるため、ドライバーがウインカー操作やブレーキ操作をすると機能が解除され、ステアリングから手を離した場合は一定時間で機能が停止する

図表5:代表的な車線維持支援

車間距離維持支援システム(ACC:Adaptive Cruise Control)

車間距離維持支援システムとは、従来のクルーズコントロール(車速維持)機能に、前方車両との車間距離の制御などを加えた機能です。図表6に、代表的な車間距離維持支援システムを示します。

代表的な機能

概要

センサーによる検知

ミリ波レーダーで前方車両までの距離や相対速度を測定し、カメラで車線や前方の車両(割り込み車を含む)を認識する

制御ユニット

センサーからの情報(距離、速度差など)とドライバーの設定(目標速度、車間距離)を基に、ECUが状況を判断する

自動加減速

 

追従走行時

前走車の速度が遅くなれば自動で減速(ブレーキ)、速くなれば自動で加速(アクセル)し、設定した車間距離を維持する

前走車がいない場合

設定した速度で定速走行する(従来のクルーズ機能)

渋滞追従機能

前走車が停止すれば自車も自動停止し、発進時にはドライバーの操作(または自動発進)で追従を再開する

図表6:代表的な車間距離維持支援システム

その他の新しい機能

その他の新しい機能として、以下のようなものがあります。

交通標識認識システム(TSR:Traffic Sign Recognition)

制限速度や一時停止、進入禁止などの標識をカメラで読み取り、ディスプレイに表示して見落としを防止します。

駐車支援機能(Parking Assist)

カメラと超音波センサーで駐車スペースを認識し、ステアリング、アクセル、ブレーキ、シフトチェンジを自動で行い、苦手な駐車をサポートします。

ペダル踏み間違い急発進抑制装置

静止物(壁、ガラス)がある状況でアクセルを強く踏んだ際、出力を抑制して衝突を回避・軽減します。

ドライバーモニタリングシステム(DMS)

車内カメラで運転手の視線やまばたきを監視し、脇見や居眠りを検知すると警告を発します。

ADASの開発技術について

ADAS開発は、自動車工学と最新のIT技術が高度に融合した技術領域です。ADAS開発に欠かせない新技術を幾つか説明します。

AI・ディープラーニング

 「道路上の落下物」や「特殊な服装の歩行者」など、従来のプログラム(IF-THEN形式)では対応できなかったパターンを、膨大なデータ学習によって識別可能にしています。 

参考記事:AIにできること一覧。具体例や将来できることも解説 

センサーフュージョン

「カメラの視覚情報」と「レーダーの距離情報」が矛盾した際(例:カメラは影を人と誤認、レーダーは何もないと判定)、どちらを優先すべきかを高度なアルゴリズムで瞬時に判断します。 

仮想シミュレーション

 実車テストでは再現不可能な数百通りの事故パターンを、仮想空間(デジタルツイン)でテストし、システムの信頼性を高めています。

参考記事:自動車開発におけるシミュレーションの基本(第4回)

ADASの法規制・義務化について

ADAS機能の中で、日本国内で搭載が義務化されている二つの機能の状況を説明します。

AEBSの義務化

 国産新型車は2021年11月から、継続生産車(既存モデル)についても2025年12月までに義務化が完了しました。これは国際基準(UN-R152)に基づいたものです。

※UN-R152:日本が主導して国連で採択された基準で、時速40kmで走行中に静止車両に衝突しないこと、時速30kmで横断歩行者に衝突しないことが定められています。

EDR(イベントデータレコーダー)

事故前後の車両挙動に関する情報(ブレーキの踏み込み量、システム作動状況など)を記録する装置であるEDRの搭載が義務化されています。新型車は22年7月以降の生産車両が対象で、その他の車両は26年7月以降に生産する車両から適用されます。EDRの活用によって事故調査の透明性が高まることが期待できます。

ADASの技術的な限界と展望

ADASは「交通事故ゼロ」という究極の目標を実現するための強力な武器の一つです。だからこそ技術者として忘れてはならないのは、「ADASは万能ではない」ということです。

センサーは激しい雨、泥汚れ、逆光などの環境変化に左右されることがあり、あくまでドライバーが主体であることをユーザーへ啓発し続ける必要があります。

今後の展望としては、以下の技術が重要となるでしょう。

V2X(Vehicle to Everything:車車間・路車間通信など)

センサーの死角(建物の陰など)にある情報を外部インフラから取得し、安全性を飛躍的に高める技術です。

OTA(Over The Air:無線アップデート)

納車後もソフトウェアを更新し、安全機能を最新状態にアップデートし続ける技術です。

AI搭載

AI(人工知能)の追加・強化は、自動車産業の大きなトレンドであり、安全性向上、自動運転技術の進化を促進します 。

モビリティ開発に携わるエンジニアは、このような最新技術に関する情報を常にアップデートし、「真の安全」を確保し続けるための研鑽を積み重ねていくことを心掛けるべきである、と筆者は考えています。

 

<注意>

  • 本記事は一般的な技術解説であり、個別車種の仕様・性能を保証するものではありません。 
  • ADASは支援機能であり、作動条件・環境条件により性能は変動します。 
  • 法規・制度は国/地域・時点により変更され得るため、最新は公的資料を参照しています。 
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