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【冒険者の地図】LINEヤフーコミュニケーションズ・東野亜矢さんが抱く、「テスト」という仕事に対する譲れないプライドとは?(後編)

LINEヤフーコミュニケーションズ株式会社サービステスト本部 コアサービステスト部 部長東野亜矢

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国内最大規模のコミュニケーションツール「LINE」のテスト業務全般を担うのが、福岡市にオフィスを構えるLINEヤフーコミュニケーションズ株式会社のサービステスト本部だ。

現在、同本部コアサービステスト部の部長を務める東野 亜矢さんは、当初テスト業務未経験者ながらテストチームの新設に携わり、2011年3月、仲間たちと共に新たなスタートを切った。

しかし、その直後、未曽有の自然災害が日本を襲う。

震災から約3カ月で「LINE」がローンチ

「福岡はさほど影響がなかったので、できることは進めようとしていたのですが、開発担当者などの多くは東京で働いていたこともあって、すぐに自宅待機になりました」

東日本大震災当時の職場状況を東野さんはこう回想する。

テスト業務がストップしたことで、3月中は他の部署の仕事を手伝う日々を過ごしていた。ところが、4月に入り状況は一変する。「LINE」という新サービスを立ち上げる企画が降ってきて、そのテスト業務が急きょ必要になったのである。

LINEの誕生には東日本大震災が大きく関わっている。震災時に電話やショートメールなどが機能せず、家族や友人・知人などと連絡が取れずに困った人たちが大勢いたのを目の当たりにし、どんな時でも止まらないコミュニケーションツールが不可欠だとして生まれたのだった。

福岡のテストチームからは2人ほどがLINEの開発プロジェクトに従事した。とはいえ、仕様書も整っていない状況の中、試行錯誤を繰り返しながらテストをしていた状況だったという。ただし、そうした現場の奮闘の甲斐もあって、6月23日、LINEは世の中に送り出された。

以降、LINEに関わるテスト業務は福岡の中核事業になる。震災によって東野さんたちのテストチームの運命も大きく動いたのだった。

福岡にすべてを集約

LINEによってテストチームは一気に拡大するのかと思いきや、実際にはそうはならなかった。人員もしばらくは15人程度で止まっていた。

「割と時間にゆとりもあって、皆で新たなアイデア出しなどをよくやっていましたね」

では、いつから数百人規模の組織に膨れ上がったのだろうか。2014年にそれまで他拠点にもあったQA・テスト部門を閉じて、すべて福岡に集約することになった。また、それに前後して、2013年11月には社名がLINE Fukuoka株式会社に。テストチームの業務対象も名実ともにLINEおよび関連サービスが中心になった。こうした状況に伴って大量のテスト人材が必要になり、東野さんは採用活動に明け暮れた。

他方で、目の前の業務は回さなくてはならない。猫の手も借りたい状況で、東野さんもプレーイングマネジャーとしてテスト実行などに関わった。チームの立ち上げ期からマネジメント業務しかやってこなかったわけだが、以前に学んだ経験がここで生きた。テストの実務に対して特に苦労はなく、楽しみつつ仕事をしていたと東野さんは振り返る。

悪戦苦闘した「リデザイン」プロジェクト

東野さんの信条は、仕事を楽しむこと。持ち前の性格もあるだろうが、マネジメント業務に携わるようになってから、そのことを一層意識するようになった。

「昔はぶつぶつと文句を言ったり、環境のせいにしていたりということもありました。でも、マネジメントの立場になった時に、私がブーブーと言っていても物事は前に進まないし、他のメンバーもワクワクしないなと思ったのです。徐々にではありますが、基本は楽しむマインドで仕事をしようと意識を切り替えていきました」

ただ、そんな東野さんでも仕事につらさを感じた体験があった。「何度も逃げ出そうと思いましたね」と苦笑いするプロジェクトのことである。

2017年、それまで点在していた法人向けのLINEサービスを再定義して、1つのサービスに作り直す「リデザイン」プロジェクトが立ち上がった。算段ではリーダー担当が10人、テスターが60人ほど必要だったが、現実は合わせて10人しか福岡にいなかった。

急ぎ派遣社員のテスターを数十人雇うとともに、リーダーは社内から登用することに決めた。テスト専門会社への業務委託も考えたものの、今まで福岡では委託経験が浅かったため管理面に不安があった。メンバーの意見も聞いた末、内製化を選択した。

ただし、突貫工事で動き出したプロジェクトチームである。当然といえば当然、統率は取れず、毎日のようにさまざまなことで紛糾したという。

「例えば、スケジュールに関して、私は全体のガントチャートで把握するよう努めていたのですが、開発現場に進捗を聞くと、全然計画通りにいっていない。そもそもガントチャートとは別軸で個別に動いていたことが判明しました。関係者が多いプロジェクトだったこともあり、正確な全体情報をつかむことに苦労しました」

そんな状態が1カ月ほど続き、このままでは大失敗するのは目に見えていた。

テストチーム側が全体スケジュールおよび進捗を把握できていないことを各方面に相談していった結果、ようやく明確なルールができた。負荷が下がった東野さんは全体の動きを正確に把握できるようになり、人的リソースの配置などにも無駄がなくなった。そこからプロジェクトはスムーズに進んでいき、2018年12月に各種法人向けLINEサービス「リデザイン」を無事にカットオーバーすることができた。

この経験から東野さんが教訓としたのは、綿密な準備の重要性はもちろんのこと、目標を明確にして、それをプロジェクトメンバーで共有するということ。当たり前のように思えるだろうが、それをおろそかにした時の怖さを痛いほど思い知った。

今でもプロジェクトが立ち上がるたびに、メンバーに対して「この目的は?」「何のためにこれをやるのか?」と率先して確認するようにしている。

ユーザーの視点を忘れないでほしい

長年にわたりLINEサービスのテスト業務に携わってきた東野さんにとって「品質」とは何を意味するのか。東野さんは「ユーザー視点」だと即答する。

「チームの人たちにいつも話すのは、ユーザーの視点を忘れないでほしいということ。上から企画された内容をそのまま出したり、要件通りにテストしたりするだけではなく、果たしてこれは本当にユーザーが使いやすいものなのか、誤解を招いてしまうことはないのかなどを深く考えてもらいたいと思っています。なぜなら私たちがそのサービスに最初に触るユーザーでもあるので」

(提供:LINEヤフーコミュニケーションズ)

もちろん、ただ言っているだけで品質が担保されるほど甘くはない。そのために福岡のテストチームでは「スキルマップシート」という独自の仕組みを構築して、個々人のテスト品質の向上に努めている。このシートはポジション・役職ごとに必要なスキル要件を明確にし、言語化したもの。定義する項目は実に300にも及ぶ。詳細は別の記事で取り上げるが、これを作ったことで、末端のスタッフまでもが品質を自分ごととして捉えるようになったそうだ。

「(狩野モデルの)『当たり前品質』『魅力品質』といった言葉が自然と出てくるようになりましたし、従来はバグ出しの量だけを追いかけていたテスターも、チームとして品質を高めるためにどう動けばいいかを真剣に考えるようになりました」

やらされ仕事ではなく、自発的に品質に向き合うようになった。東野さんがさらに喜ぶのは、ほとんどがテスト未経験だったスタッフたちがプロとしての自覚を持てるようになったことである。

付加価値を生む仕事に誇りを持つ

LINEとヤフーは2023年10月1日に経営統合し、LINEヤフー株式会社となった。同時に、LINE FukuokaもLINEヤフーコミュニケーションズに。現時点ではまだ福岡のテスト業務に大きな変更はないものの、受け身にならずに業務領域を拡大していきたいと東野さんは意気込む。

「サービス、ひいては会社が発展していく上で、品質は当たり前にないといけないもの。私たちは直接的な利益を出すチームではありませんが、サービスが付加価値を生むためには私たちの業務関与が必要だと思っています。そういったプライドを持って仕事をしています」

今回の経営統合は追い風だと感じている。LINEだけではなく、ヤフーのサービスにも貢献していきたいという。

LINEヤフーから次に新たなビッグサービスが生まれるとき、その陰には福岡で強いプライドを胸に品質活動に取り組む東野さんらテストチームの尽力があることを忘れてはいけない。

LINEヤフーコミュニケーションズ株式会社サービステスト本部 コアサービステスト部 部長東野亜矢

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