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品質管理と品質保証。考え方や組織的な活動における両者の違い

品質管理と品質保証。考え方や組織的な活動における両者の違い

製造業において「安全」と「品質」がとても大事なこととされていることに異論がある方は、いないことでしょう。とりわけ日本の製品は「高品質」であることが、もはや「当たり前」とされており、英語ではGood enough quality、日本語にすると「そこそこ品質」となりますが、値段なりに用を足すことができる「それなり」な品質ならば良しとしよう、という割り切った考えは、あまり良しとされていません。 

歴史を振り返ると、第2次世界大戦後のわが国の復興期において「安かろう悪かろう」と諸外国から言われた製品品質を向上させるための全国的かつ組織的な取り組みが功を奏し「品質大国日本」を自負するようになった結果だからでしょう。 

ハードウェアやソフトウェアに関わらず、製品やサービスを製造・開発する企業では、ISO9000に基づいたQMS(品質マネジメントシステム)を構築し、品質マニュアルに則って品質の高い製品をお客様に提供することを社是にしていることは珍しくありません。 

ベリサーブのWebサイトでも、経営理念(当社ではパーパスと呼んでいます)として『品質を創造する力でイノベーションを加速し、未来に続く幸せを実現する。』を掲げています。 

品質が重要なことは、読者の方にもご理解いただけると思いますが、そもそも「品質」とは何かについて、それこそ今回のタイトルのような品質管理や品質保証に仕事で関わらない限り、きちんとした定義を知っている方は少ないことでしょう。よく分からないために、開発において品質を確保するための活動に対して面倒くささを感じたり、きつい、などと思ったりすることもあることでしょう。 

そこで本記事では品質管理や品質保証の話をする前に、「品質」の定義からおさらいすることにします。

品質管理と品質保証の前提となる「品質」の定義

まず規格から見てみましょう。【ISO 9000:2015(JIS Q9000:2015) 品質マネジメントシステムー基本及び用語】によると品質は次のように定義されています。

『対象に本来備わっている特性の集まりが,要求事項を満たす程度。

注記1 “品質”という用語は,悪い,良い,優れたなどの形容詞とともに使われることがある。

注記2 “本来備わっている”とは,“付与された”とは異なり,対象の中に存在していることを意味する。』

と記載されています。

この定義は抽象的であるため、もう少し本規格から説明を加えます。

対象は、製品やサービスなど『認識できるもの又は考えられるものは全て』とされています。 何に対する品質を語るのかによって、対象になるモノやコトは変わることが分かります。

次に特性を見てみましょう。

『特徴付けている性質。

注記1 特性は,本来備わっているもの又は付与されたもののいずれでもあり得る。

注記2 特性は,定性的又は定量的のいずれでもあり得る。

注記3 特性には,次に示すように様々な種類がある。

a) 物質的(例 機械的,電気的,化学的,生物学的)

b) 感覚的(例 嗅覚,触覚,味覚,視覚,聴覚などに関するもの)

c) 行動的(例 礼儀正しさ,正直さ,誠実さ)

d) 時間的(例 時間厳守の度合い,信頼性,アベイラビリティ,継続性)

e) 人間工学的(例 生理学上の特性,人の安全に関するもの)

f) 機能的(例 飛行機の最高速度)』

となっています。

要求事項は『明示されている,通常暗黙のうちに了解されている又は義務として要求されている,ニーズ又は期待』です。提供側と利用側の双方で明示的ならば問題ないのですが、暗黙のうちに義務化される要求までが含まれていることがポイントとなります。ですから、どのようなニーズがあるかは、対象となるモノやコトに対する利害関係者(ステークホルダー)によって変化します。

ISO9000の品質の定義として、飯塚 悦功 著【現代品質管理概論】では、シンプルに『ニーズにかかわる対象の特徴の全体像』とし、ニーズに関わるからこそ対象は製品やサービスを提供する側ではなく、利用者(受益者)となる顧客側ニーズによる特性が対象となることを解説しています。

品質管理と品質保証に対する考え方

品質の定義が明らかになりましたので、本題となる品質管理と品質保証、特にこの2つの言葉、概念の違いを意識しながら考察を進めます。

管理という言葉を聞いたとき、どのような印象を持たれますか?

誰かにコントロールされることをイメージする方がいれば、誰かをマネジメントすることをイメージする方もいることでしょう。

日本語では、コントロールとマネジメントをひとくくりに管理と表現しがちですが、厳密にはマネジメントはコントロールを包含しています。

品質管理(QC: Quality Control)の規格での定義は『品質要求事項を満たすことに焦点を合わせた品質マネジメントの一部』となっています。

この規格定義では、品質保証も同様に品質マネジメントに包含されています。

『品質保証(QA: Quality Assurance) 品質要求事項が満たされるという確信を与えることに焦点を合わせた品質マネジメントの一部。』

品質マネジメントそのものに何が含まれているかといえば、『品質方針及び品質目標の設定,並びに品質計画,品質保証,品質管理及び品質改善を通じてこれらの品質目標を達成するためのプロセスが含まれ得る。』とされています。

このように品質マネジメントはさまざまな活動を含んでいます。

規格の内容は先の通りなのですが、一般的に日本では「品質管理」という言葉は、品質マネジメント全体を指す概念として語られることが多いようです。

SQCとTQC

製造業では製品(プロダクト)品質を管理する代表的な手法として、SQC(Statistical Quality Control:統計的品質管理)があります。主に生産現場(工場のライン)における歩留まりを管理するアプローチに統計を適用した手法です。

他にも品質管理といえば、TQC(Total Quality Control:統合的・全社的品質管理)という、製造部門での品質管理にとどまらず、購買や設計、営業、マーケティング部門やメンテナンス部門など全社的な活動として品質管理に取り組む手法があります。このTQCがTQM(Total Quality Management:総合的品質マネジメント)へつながり、経営の“質”まで取り扱う手法へと発展していきました。

ここまで述べたように、ControlやManagementという言葉を、日本語では管理と表現したりマネジメントと表現したりするなど一様ではありません。これが品質管理と品質保証の用語理解をややこしくしている大きな要因であることは、もうお分かりいただけたことでしょう。

前述のように歴史的背景の中で手法そのものが発展してきたこともあり、QC(Quality Control:品質管理)とQA(Quality Assurance:品質保証)の定義自体が企業や組織によって一様ではないことが、用語理解に更なる混乱を生じさせています。

組織的な活動における品質管理と品質保証の違い

では、組織的な活動としてQCとQAがどのように異なるのかを、筆者が電機メーカーに在籍していた頃(1990年代)の事例から考えてみましょう。

規格の定義から分かる両者の端的な違いは、品質管理が品質要求を満たすことそのものに主眼を置いた活動であることに対して、品質保証は、要求事項が満たされるかどうか確信を得るための活動である、ということです。

私が所属した組織での品質管理部門(品管)の業務や分掌は、品質要求を満たしているかどうかを、主にQMSで規定された開発プロセスに則して開発成果物が作成できている・できたこと、および品質指標を満足しているかを現場から上がってくる計測結果をベースに判断し、次の開発工程へ進めてよいかどうか、最終的には出荷の可否の判断材料をマネジメント層へ提示するクオリティゲート(品質の関門)としての役割を果たしていました。ですから、品質管理部門自身が開発成果物を作成しませんし、設計も実装もテストすらしません。

一方、品質保証部門(品証)の業務や分掌としては、品質に対する確信を得るために、自らが工場でシステムテストを実施し、故障や欠陥を見つければ不具合を開発部門への報告・不具合管理まで実施していました。開発部門と連携した内部品質の評価や検証にとどまらず、お客様の受入テストに立ち合い、最終的には納入先での試験からお客様への引継ぎまで、つまり外部品質や利用時の品質まで保証するという形態を持つ部門でした。

私見ですが、品質管理部門は客観的に製品が品質要求を満たしているかどうかを判断する材料をそろえ、かつ整えることを主眼にしているのに対して、品質保証部門は作り手(製品開発)側、受け取り側(お客様)双方で品質要求を満たしているかどうかを実感し確信したことを、両者で合意するための活動を主眼に置く、という役割分担をしていると理解しています。

一様には言えない品質管理と品質保証の活動に求めるべき事項や役割

本記事では、筆者の経験をベースに品質管理と品質保証の違いを見てきましたが、取り扱う製品ドメイン、求められるミッションクリティカル度合(セキュリティや安全性含め)によって、両者の活動へ求めるべき事項や、役割も異なるかと思います。

ベリサーブには品質管理や品質保証の活動に対して、多くの実績から積み上げてきた明文化されたノウハウと、それらを生かせるチームを保有しています。品質確保そして、品質向上に私たちベリサーブの総合力を生かしてみませんか。

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