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E2Eテストとは。自動化するメリットと注意点を解説

目次
近年、ソフトウェア開発の高度化や複雑化が進む中、製品やサービスの品質への要求は増大しています。特に、Webサービスやスマートフォンアプリなど、ユーザー体験の重要性が増している分野では、リリースのスピードと品質を両立するためのテストプロセスの最適化が不可欠です。こうした中で、システム全体を対象とする「E2E(End to End)テスト」やその自動化への関心が高まっています。
本記事では、E2Eテストの基本から、E2Eテストを自動化する際のメリットや注意点、主なE2E自動テストツールやフレームワークの比較や、最新のAI活用事例について解説します。
E2Eテストとは
E2E(End to End)テストとは、テスト対象となるソフトウェアやシステム全体の振る舞いを「始まりから終わりまで」、すなわちユーザーシナリオを通した一連の動作を確認するためのテスト手法です(図表1)。
具体的には、複数のサブシステムや外部サービスが連携する中で、ユーザーが実際に操作する一連の流れ(例:ECサイトで商品検索→カート投入→購入→決済完了)をシナリオとして想定し、期待通りにテスト対象が動作するかどうかを検証します。

E2Eテストの目的
E2Eテストの目的は、主に次のようなものがあります。
- 実際のユーザーが使用することを想定してテスト対象を操作した場合に、システムがシナリオで想定した通りに動作するかどうかを確認する
- テスト対象と外部システムやサービスとの連携がシナリオで想定した通りに動作するかを確認する
- 特定の操作が開始されてから終了するまでのフロー全体がシナリオで想定した通りに進み、問題なく完了することを確認する
E2Eテストと他のテストとの違い
ソフトウェアテストにはさまざまなレベルがあり、それぞれ目的も異なります。E2Eテストの意義を深く理解するには、まず各テストレベルである「コンポーネントテスト」「統合テスト」「システムテスト」「受け入れテスト」との違いを知ることが重要です(図表2)。
テストレベル | 定義 | 別名 | 実施者 |
|---|---|---|---|
コンポーネントテスト | 個々のハードウェアまたはソフトウェアコンポーネントに焦点を当てたテストレベルのこと(ISTQB用語集-コンポーネントテストより)。 | 単体テスト、ユニットテスト、モジュールテストなど | 主に開発担当者 |
統合テスト | コンポーネント間、またはシステム間の相互作用に焦点を当てたテストレベル(ISTQB用語集-統合テストより)。 | 結合テストなど | 主に開発担当者 |
システムテスト | システム全体が特定の要件を満たしていることを確認することに焦点を当てたテストレベル(ISTQB用語集-システムテストより)。 | 総合テストなど | 主にQA・検証エンジニア |
受け入れテスト | システムを受け入れる判断に焦点を当てたテストレベル(ISTQB用語集-受け入れテストより)。 | 承認テスト、検収テストなど | システム発注者や実際のユーザー |
図表2:テストレベルの説明
E2Eテストはテストレベルではなく、主にシステムテスト、受け入れテストなどの各テストレベルにおいて利用されます(図表3)。

E2Eテストを自動化するメリットと注意点
E2Eテストの中でも、特にリグレッションテストのように繰り返し実行が必要なテストでは、自動化が効果的に活用されています。 一方で、自動化することに対する課題や注意点もあります。以下に主なメリットと注意点を整理します。
主なメリット
まずはメリットです。
テスト活動の効率化
手作業では多くの工数が発生するようなテストも、自動化することでより安定して迅速に実行できるようになります。またリグレッションテストのように、リリースのたびに繰り返し実行するようなテストは、継続的に自動テストを運用することで作業の工数削減が期待できます。
開発サイクルの高速化・リリース頻度の向上
E2Eテストを自動化することで、毎日、昼夜を問わずユーザーシナリオ全体のテストが可能になります。テスト活動が効率化されることで、開発サイクル全体の高速化・リリース頻度の向上を実現できます。また、リリースのタイミングに合わせて自動でテストが実行されるため、不具合の早期発見にもつながります。
人的ミスの低減
テスト実行手順の「実行すべきステップの漏れや順番の誤り」「間違い」などのヒューマンエラーが減り、より安定した品質でのテストが可能になります。
注意点
次に注意点を2つ解説します。
初期コスト・メンテナンスコストがかかる
自動テスト環境構築、テストスクリプトの作成など、テスト自動化は初期導入に比較的多くのコストがかかります。場合によっては、テスト自動化にかかるコストが手動テストにかかるコストよりも高くなってしまうこともあります。
また、仕様変更や機能追加の際にはテストスクリプトの更新が必要になります。一度自動化してそのまま放置され、検知すべき不具合が検知できていない、といった状態にならないよう、継続的にメンテナンスを行うことが重要です。
E2Eテストでは、特にテスト対象が複数にまたがったり、テストアイテム数が多くなることが多いため、テスト計画時にしっかりとメンテナンス工数とコストを把握しておくことが重要です。
自動化が困難/不可能なため、手動での実行が必要なテストがある
実際のネットワークや端末動作、物理的な操作(例:スマホの指紋認証等)を行うテストでは、自動化が困難/不可能なケースも存在します。
また、E2E自動テストでは、あらかじめ指定した手順・期待値しか実行・確認しないため、想定していない表示や動画の乱れなどがあった場合は検知できません。こういったテストは手動での実行が必要となり、手動テストと自動テストの両方のテストが必要になることに注意してください。
E2Eテスト自動化を実現するツール、フレームワーク
E2Eテストを自動化するメリットと注意点について述べましたが、その効果を引き出し、運用面での課題を解決するために「E2Eテスト自動化」を行うことを推奨します。自動化によってE2Eテストの実施・管理がより効率的になり、開発・リリースのスピードや品質要求にも柔軟に対応できるようになるからです。
E2Eテスト自動化を実現する、各種ツールやフレームワークの詳細な比較などは、HQW!内の以下記事でより詳しくまとめられています。併せて参照してください。
E2Eテスト自動化によるDevOpsの実現
DevOpsでは「開発(Development)」と「運用(Operations)」の壁をなくし、開発・テスト・リリース・運用のサイクルをシームレスかつ迅速に回します(図表4)。
E2Eテスト自動化は、継続的インテグレーション/継続的デリバリ(CI/CD)パイプラインを用いて「リリース前にサービス全体の動作を毎回確認」できます。ソースコードの変更・機能追加/修正などの際にすぐにE2Eテストが実行できるため、継続的な品質担保ができます。
<DevOpsの実現例>
- Gitなどへプロダクトコードをpush
- 連携する自動テストツールからE2Eテストを実行
- E2Eテスト結果に問題がなければ本番環境へデプロイ

DevOps時代におけるE2Eテストの意義
リリースサイクルの高速化により、E2Eテストの重要性は今後もますます高まっていくことが予想されます。
手動テストでは対応しきれない「量」や「スピード」を自動化によって実現することにより、 安定した品質を保つことが重要です。
また、開発・修正のたびにE2Eテストが即座に実行され、不具合の早期検出と対応が可能な状態を作り、DevOpsを実現していくことが重要です。
生成AIとE2Eテスト自動化
近年、AI技術の進展により、E2Eテスト自動化にも新しいアプローチが生まれています。
具体的な活用例を二つご紹介します。
自動テストスクリプト生成
Playwright MCPなどの登場により、AIを使って自然言語からE2Eテストの生成・実行ができるようになりました。SaaS系のツールでも、MCPなどの技術を使って自然言語からE2Eテスト生成ができるようになり、E2Eテスト自動化のさらなる高速化、効率化が見込まれます。
UI変化への自動適応
主にSaaS系のツールでは、CSSやDOMの変更に対して、AIが要素情報を特定・提案・変更するような機能が備わっています。これにより、不安定なE2E自動テストが作成されるのを防げます。
現行のSaaS系ツールの多くでも、AI技術を導入し始めています。AI技術の適用により、誰もが複雑なE2Eテストを迅速に作成できる時代が到来しつつあります。
E2Eテスト自動化により品質と開発スピードの向上を目指す
ソフトウェア開発現場において、品質とリリーススピードの両立は年々重要性を増しています。その実現に不可欠なのが「E2Eテスト」と、その「自動化」の仕組みです。
本記事では、E2Eテストの基本概念から、その目的や従来のテストレベルとの違い、E2Eテストを自動化するメリット・デメリット、DevOpsへの寄与、最新のAI活用例まで解説しました。
DevOpsの考え方を取り入れ、E2EテストとCI/CDツールと組み合わせることで、開発~テスト~運用のサイクルがより高速化され、また、ソフトウェアリリース時のリスクを最小化できます。AI活用による自動スクリプト生成やUI変更への自動適応など、今後さらに進化するE2Eテスト自動化技術にも注目しておくと良いでしょう。
ベリサーブではE2Eテストの計画~設計~実行~不具合分析等の他、E2Eテスト自動化の導入支援や運用支援を行っています。お客様の状況、環境に合わせたテスト自動化をご提案いたしますので、ぜひご相談ください。
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