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ベリサーブ座談会:AIが進化し続けてもQAエンジニアが残る理由(後編)

株式会社ベリサーブ 執行役員 研究開発管掌 /AIQVE ONE株式会社 取締役 CTO 松木晋祐
株式会社ベリサーブにてソフトウェア開発部門、研究開発部門の創設をはじめ、さまざまなソフトウェアQAに関するSaaSのローンチを行う。また、AI4QA分野としてゲームデバッグのAIによる全自動化サービスなどの研究開発・提供、技術戦略推進部門の管掌などを担う。著書に、システムテスト自動化標準ガイド、Androidアプリテスト技法、生成AIアプリケーション評価入門など。活動に、東京電機大学非常勤講師、JSTQB技術委員、ISO/IEC JTC 1/SC 7 Expert/Co-Editor、テスト自動化研究会の創設など。
株式会社ベリサーブソリューションデザイン本部 事業企画部長須原秀敏
車載関係を中心にソフトウェアテスト/品質業務を経験。現在はテスト会社における研究開発部門でモデルベースドテストやAIの品質保証技術の開発に取り組む。JSTQB技術委員、JTC1/SC7/WG26エキスパート。
株式会社ベリサーブ品質保証部 プロジェクト推進課 シニアコンサルタント山﨑崇
2001年大手セキュリティーベンダーに新卒入社。QAエンジニアとしてさまざまなプロジェクトに参加し、特にソフトウェアテストの活動全般を担う。2015年より株式会社ベリサーブに入社。社内外のプロジェクトを支援するチームを立上げ、プレイングマネジャーとして現場を飛び回っている。また、社外活動にも積極的に参加。ASTERテストプロセス改善 WG メンバー、テスト設計コンテストU-30 審査委員、JSTQB認定ソフトウェアテスト技術者 - Foundation Levelトレーニングコース講師など。
前編に引き続き、「生成AIと品質保証のこれまでとこれから」をテーマに、株式会社ベリサーブの有識者代表として、執行役員 研究開発管掌の松木晋祐、ソリューションデザイン本部事業企画部長の須原秀敏、品質保証部プロジェクト推進課 課長の山﨑崇の三者が近未来の展望などをディスカッションした。
ハーネスエンジニアリングの登場
山﨑:一方で、QAエンジニアが生成AI技術を活用して自らの仕事を変えていく、「AI4QA」という動きも出てきています。これについて、須原さんいかがですか?
須原:いきなり宣伝をしたいわけではないのですが、当社でも最近、テスト設計エージェント「TESTRA」と呼ばれるQAエンジニアの作業を代替するツールを発表しました。現時点ではテストケースを作るところを担っていますが、将来的にはテスト実行を含め、AI主導でテスト活動が行えるような形にする予定です。
山﨑:ありがとうございます。テストの中で AI を活用する文脈もあれば、 開発そのものを AI で駆動していくといった考えもありますよね。

松木:私からもよろしいですか?
山﨑:はい、どうぞ。松木さん。
松木:これに関して、ベリサーブでは「QA4AIDD(Quality Assurance framework for Artificial-Intelligence Driven Development which AI-Applied Products and Services)」というキーワードを使っています。QAは基本的に、でき上がったプロダクトにテストや評価などを実施し、不足している機能などを直すことで品質を高めていくプロダクト志向のQAと、そもそもソフトウェア開発の作りの質を上げていくことで、結果としてプロダクトの質を向上させようとするプロセス志向の QA の2つのアプローチがあります。
同様にAIに関しても、AIが組み込まれたプロダクトのQAと、AIによって駆動される開発プロセスの質を向上させるためのQAというアプローチがあり、後者をQA4AIDDとわれわれは呼んでいます。最近は「ハーネスエンジニアリング」という言葉も出てきました。ハーネスエンジニアリングは、AIエージェントにより良い開発をさせるための環境を整えてあげようといったアプローチです。
これからの時代、若手エンジニアの育て方は?
山﨑:座談会はどんどんと進みますが、この流れで少し未来の話も聞かせてください。AIエージェントの普及でソフトウェア開発のハードルが大きく下がっています。これはQAにとってどのような意味を持つと思いますか?
松木:以前は何かをソフトウェアで解決したいと思っても、開発においてプログラミングによる実装が特殊技能だったためにそれがボトルネックでした。ですが、今はプログラミングの素養がなくてもアプリケーションなどを作れる時代になってきています。パッと見、動くものなら量産できる。では、ソフトウェア開発がコモディティ化する中で、次のボトルネックはどこかというと、まさにQAに関する部分です。「こういう時でも動くのですか?」「1カ月後も動いていますか?」「100人が同時に使ったらどうなりますか?」という視点を持って製品やサービスを仕上げていくのは、QAの協力がないとできません。ソフトウェア開発で量的にも規模においても爆発が起きた時に、あちこちで「動かない」という体験が増え、QAが今以上に求められる状況になると考えています。

須原:AI4QAという観点では、テストケースをテストスクリプトに変換するような定型的な作業、情報を右から左へ流すような作業は基本的になくなっていくでしょうね。でも、その分、テスト戦略や品質方針を熟考することに注力できるようになる。定型業務がほぼ全てだった方々にとっては仕事がなくなるという話にも聞こえますが、本来、QAには考える仕事が多いため、相対的にそちらの重要度は上がっていくと感じています。
山﨑:そうした時代の変化において、若いテストエンジニアはどうやってスキルセットや知見を獲得していけばいいのでしょうか。コーディングや詳細設計といった経験を積む機会が減ってしまう中で、判断力や思考力をいかに育てるかは切実な課題だと思います。
松木:新人育成の話ですよね? それはもう、時間を逆行して捉える思考力を身に付けるしかないでしょう。目の前には圧倒的なケイパビリティ、つまりAIがあるわけですから、それに適切な指示と判断ができれば新人でも仕事はできます。ただし、その判断力は経験によってしか積み上がらないとすると、過去に先輩たちがどんな判断をしたのか、考え学ぶことが早道かもしれません。
須原:似たような話をソフトウェア開発会社の人たちとしたことがあります。若手が書いたコードを先輩がレビューしながら知識や経験を伝承するといった形がなくなりつつあるのですよね。そうした中で今、先輩が何を考えて、どう判断したかを一緒に働きながら伝える、バディ型の教育が模索されています。あるいは、経験を積ませるという点では、思い切って若手に任せて失敗を繰り返させるという方法もあるかもしれません。
人類は管理職から起業家へ
山﨑:ここまでの議論を踏まえ、改めてQAエンジニアという職種は今後どうなっていくとお考えでしょうか? お二人それぞれの感想をどうぞ。
須原:繰り返しになりますが、作業的な仕事はどんどん無くなっていきます。その代わりに、QAエンジニアはより経営に近い立場へと変わっていくでしょうね。経営が意思決定するために必要な情報を提供したり、要件定義に関わったり。私自身も今後はそのような方向にキャリアを積もうとしています。
松木:東京大学・飯塚悦功名誉教授の著書『現代品質管理総論』に、「品質保証とは元来、物事をうまくやるための方法論だ」といった、私の好きな一節があります。また、その弟子で、ソフトウェアテスト技術振興協会(ASTER)の理事長だった西康晴さんも「ソフトウェアに限らず品質保証を極めていくと経営まで行き着く」とおっしゃっていました。そういう意味では、須原さんの話は理にかなっていますね。
AIがさらに賢くなっていく中で、人間がやることの抽象度は確実に上がっていきます。今のAIがAGI(Artificial General Intelligence)に進化すると、一個人レベルの能力を超えた存在となるため、企業の中での人間の役割は管理職、つまりマネジメントです。さらにAGIがASI(Artificial Superintelligence)になれば、企業並みの実行能力を兼ね備えるといわれています。そうなると全人類は、どのような社会課題を解決するかを考える起業家のような存在になっていくのかを注視しています。
山﨑:今はまだAIが道具であり、基本的には全て人間の管理下にある状況ですけれど、松木さんの見立てではいずれ人間がAIのハーネスの中に入ってくるという、まさに映画「マトリックス」の世界になっていくのかもしれません。

松木:順当にいけばそうなりますね。ただ、今後1、2年で注目すべきは「フィジカルAI」です。人間は皆、「まだロボットは器用に手を動かせない」と油断しているかもしれませんが、もうすでにロボットが洗濯物を畳めるのですよ。知ってました? 近い将来、100万〜 200万円程度で家の中を動き回るロボットが売られるようになるでしょうね。
山﨑:確かに、最近ニュースなどでも人型のロボットが機敏に動く映像を目にしますね。一昔前のロボットのイメージとはまるでかけ離れていて驚きました。
須原:フィジカルAIに関して言えば、ロボットなどが物理的に人間に危害を与えるリスクがあるわけですよね。そういう意味では、安全・安心を担保するためにQAが取り組むべき領域はさらに広がっていくと感じています。だから直近は私たちもやることが山ほどあるということです。
松木:たくさん働かないと! 私から今の話を総括すると、テクニックそのものはAIに聞けばわかる時代になりましたが、人がお金を払うのはテクニックだけではなく、その人が積み上げてきたストーリーや、その場でしか得られない体験に対してでもあります。AIには生み出せないストーリーを自分のものにしていくことが、これからのエンジニアにとってより大切になってくるのではないでしょうか。
山﨑:AIが何かを失敗した時に、最終的に責任を負うのは人間の役目だと思います。今後どれだけAIが進化しても、その役割は残り続けるでしょう。常に責任を担保するという品質保証の仕事もこれに通ずる部分があります。QAはまさにその核心にあるものだと改めて感じました。松木さん、須原さん、本日はありがとうございました。
松木&須原:ありがとうございました。

株式会社ベリサーブ 執行役員 研究開発管掌 /AIQVE ONE株式会社 取締役 CTO 松木晋祐
株式会社ベリサーブにてソフトウェア開発部門、研究開発部門の創設をはじめ、さまざまなソフトウェアQAに関するSaaSのローンチを行う。また、AI4QA分野としてゲームデバッグのAIによる全自動化サービスなどの研究開発・提供、技術戦略推進部門の管掌などを担う。著書に、システムテスト自動化標準ガイド、Androidアプリテスト技法、生成AIアプリケーション評価入門など。活動に、東京電機大学非常勤講師、JSTQB技術委員、ISO/IEC JTC 1/SC 7 Expert/Co-Editor、テスト自動化研究会の創設など。

株式会社ベリサーブソリューションデザイン本部 事業企画部長須原秀敏
車載関係を中心にソフトウェアテスト/品質業務を経験。現在はテスト会社における研究開発部門でモデルベースドテストやAIの品質保証技術の開発に取り組む。JSTQB技術委員、JTC1/SC7/WG26エキスパート。

株式会社ベリサーブ品質保証部 プロジェクト推進課 シニアコンサルタント山﨑崇
2001年大手セキュリティーベンダーに新卒入社。QAエンジニアとしてさまざまなプロジェクトに参加し、特にソフトウェアテストの活動全般を担う。2015年より株式会社ベリサーブに入社。社内外のプロジェクトを支援するチームを立上げ、プレイングマネジャーとして現場を飛び回っている。また、社外活動にも積極的に参加。ASTERテストプロセス改善 WG メンバー、テスト設計コンテストU-30 審査委員、JSTQB認定ソフトウェアテスト技術者 - Foundation Levelトレーニングコース講師など。
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