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新QC7つ道具について解説 ~コミュニケーションツールとして現役バリバリな手法、その使い方と使い分け~

目次
新QC7つ道具は、その名が示す通り、「新しい」QC7つ道具です。
本記事では、品質管理を推進するためだけではなく、開発者のディスカッションの場においても活用できる手法として分かりやすく解説します。
QC:Quality Control 7つ道具とは?
QC(Quality Control、以下QC)7つ道具は、統合的・全社的品質管理(TQC:Total Quality Control)において、TQC活動を推進する管理者とスタッフがさまざまなシーンで用いられる手法を、武蔵坊弁慶の7つ道具になぞらえて名付けられました。
日本的品質管理の生みの親と呼ばれる故 石川馨(いしかわ かおる)先生は「QC7つ道具をうまく活用すれば、一般企業の身の回りにある問題の95%は解決できる」と断言されました。
これは、7つの道具を使い分けることによって、品質管理のさまざまな局面に対処できると共に、デジタルなコミュニケーションツールとして活用することで、組織の内外における知恵や勘所といった暗黙知を形式知化し、情報共有できるからです。

QC7つ道具にどのような道具があるかといえば、図表1の通り、読者の皆さんも一度は見たことがあるものばかりではないでしょうか。
- グラフ:分析対象のデータを時系列に折れ線グラフやレーダグラフなどで表現した図
- 管理図:中心線や管理限界線を入れることで現状と目標との乖離や差分を表現した図
- パレート図:分析対象を重要度や優先度順に、分類した項目を大きい順に並べた図
- チェックシート:チェックすべき項目を一覧表化し、抜け漏れなく点検や確認、順守状況などを確認できるようにした図
- ヒストグラム:計測値(長さや重さなど数値化したデータ)の分布や平均、ばらつきなどを見やすくした図
- 散布図:XY軸で2つの対となるデータの相関関係を表した図
- 特性要因図:原因と結果のつながりを可視化することで、特性を全体的に捉えられるようにした図で、その見た目からフィッシュボーンチャート(魚の骨図)とも呼ばれる
TQCにおいて統計的な品質管理手法(SQC:Statistical Quality Control )を推進するための主要なツール群として、たとえSQCやQC7つ道具を知らなかったとしても、普段から目にしていたり、使っていたりする方は多いでしょう。
数値化されたデータを分析するため、Excelをはじめとする表計算ソフトを使ってグラフ化することがほとんどだと思います。
単にQC/新QC7つ道具にどのような手法があるのかを知らずに、ただ聞いたことがないとか、古めかしい手法だという印象だけで「QC7つ道具は使えない/使えなさそう」と言う方がいたとしたら、図表1で示したような、それぞれの道具のイメージを見せるだけで誤解を払拭できるでしょう。
新QC:Quality Control 7つ道具とは?
ここまで、簡単にですがQC7つ道具についてご紹介しました。
次に、メインテーマである「新QC7つ道具」という手法がなぜ生み出されたのかということや、QC7つ道具との違い(使い分け)について解説を続けます。
QC7つ道具と新QC7つ道具の違い
QC7つ道具は、管理図や実験計画法といった統計手法を用いることで数値化し、定量的にデータを分析・解析するための手法です。
一方、TQCが総合的品質マネジメント(TQM: Total Quality Management)へと発展する中で、定性的な自然言語(日本語)で表された情報を整理し可視化するための手法として「新QC7つ道具」が提唱されました。
どちらも、製品品質の現状を把握したり、これからの推移を予測するための道具ではありますが、情報の扱い方が上記のように異なるため、用途によって使い分けたり、両方の道具を使ったりもします。
新QC7つ道具の一覧
自然言語を整理し可視化する手法は、今ではモデリングとも呼ばれています。単なる絵(ポンチ絵とも呼ばれる)やマインドマップ、UML(Unified Modeling Language)やSysML(System Modeling Language)といった準形式記法など、さまざまな表現があります。
今回取り上げる、新QC7つ道具(N7:エヌナナとも呼ばれます)で用いられる手法は以下の通りです。
- 親和図法
- 連関図法
- 系統図法
- マトリックス図法
- マトリックス・データ解析法
- PDPC法
- アロー・ダイヤグラム法
では、それぞれどのようなものなのかを簡単に説明していきます。
親和図法
関係者の頭の中にあり、整理したモノゴトに対するそれぞれ独自の考え方や、共通した考え方を、いったんそれぞれの頭の中から言葉としてカードに書き出して、それぞれのカードを大枠で分類して、全体像や構造を明らかにすることに用います。
連関図法
モノ/コトの原因と結果や、目的と手段などをひも解くために、モノやコトをそれぞれ線で結んでいき、片方向や両方向のつながりから導かれる関連性を明らかにすることに用います。
系統図法
目標に対して、どの様な手段をたどってゴールへ至るのかを、トップダウンのツリー構造で明らかにすることで、実施/実現可能な施策を導くために用います。
マトリックス図法
一般的に「行」と「列」で構成された表をマトリックスと呼びます。マトリックス図法では、行と列に要素を分けて、行と列それぞれの項目が交わっているかどうかで分析対象の特性(何が問題で、何を重視しなくてはならないかなど)を明らかにするために用います。
マトリックス・データ解析法
大量のデータから、データ間の関連性やパターンを明らかにすることで、納得性のある結論を導くために用います。主成分分析法という多変量解析の一種であり、新QC7つ道具の中で唯一数値データを扱います。
PDPC(Process Decision Program Chart)法
事前に問題の予防を図りリスクを低減する手法であり、計画を進めると、どのような障害が起こり得て、それが起こったとき、どのように対処すべきかを決めておくために用います。
アロー・ダイヤグラム法
プロジェクトの進行状況を視覚化し、最適なプロジェクトの進め方(パス)を導き出すために用います。タスク間で依存関係があるルートを明らかにすることで、リードタイムの短縮につなげる他、タスク配置の最適化を行います。

QC7つ道具と新QC7つ道具の使い方/使い分け
筆者自身は、QC/新QC7つ道具を覚えたのは、電気メーカー系の会社に入社しQCサークルで改善活動を行うための教育を受けた時だったと記憶しています。学生時代はデータ分析のためにパレート図やヒストグラムを使うことはあっても、それがQC7つ道具に含まれているということは知りませんでした。
普段から筆者は、データ分析やブレーンストーミングでの道具として、それほど意識せずにQCと新QC7つ道具を使っていますが、使用する目的や、何を分析したいかによって使い分けています。
改善サイクルを表現する一般的なPDCA(Plan,Do,Check,Act/Action)サイクル中のPlan 時において、それぞれの手法を使い分けるための分かりやすい説明が『管理者・スタッフのための 新QC七つ道具の手引き』日科技連出版にありましたので、ご紹介します。
- Plan1は、雑然、混沌とした状況の整理と問題設定の段階で、ここでは親和図法や関連図法を使って問題を構築していきます。
- Plan2は、手段への展開の段階です。系統図法、マトリックス図法を使って、方策を展開していきます。
- Plan3は、手段を時系列的に配列し、実行計画を作成する段階で、アロー・ダイヤグラム法やPDPC法を活用します。
図表3:QC7つ道具と新QC7道具のPDCAサイクルでの位置付け
新QC7つ道具を適切に使い分けることで、まだ言語化できていない、もやもやっとした段階から使うことができて、整理したい事項が言語として明らかになってくると、相関関係や順序性、また依存関係などを導くことができるようになってくるのです。
新QC7つ道具の覚え方
道具の使い方は「習うより慣れよ」とよく言われますが、新QC7つ道具にも同じことが言えます。
私自身、普段のブレーンストーミングにおけるコミュニケーションの道具として、親和図や系統図を用いていることは前述した通りです。使っているうちに自然と、どのようなときに、どのように使えば良いのかが分かるようになっていきます。ここまでになれば、すっかり新QC7つ道具の使い方を覚えて、人にも教えられるようになっていることでしょう。
使い方のポイントとして、いきなりスプレッドシートやワード文書のようなデジタルな形にしないことをおススメします。ローテクではありますが、付箋紙に要因を書き出して、模造紙やホワイトボードの上で親和図や系統図にまとめるようにするのです。
ブレーンストーミングの場でキーボードをチャカチャカしても議論は盛り上がりませんし、何より、紙に手でアイデアを書き出した方が、経験論ではありますが自由な発想が得られやすいからです。
出来上がった親和図や系統図は、必要に応じてデジカメやスマートフォンで記録に残し、それを基に議論の場とは別に、後からスプレッドシートに書き起こすなどすれば、共有と再利用がし易くなります。
まとめ ~新QC7つ道具以外の道具との関係~
本記事では、新QC7つ道具の紹介と基本的な使い方を解説しました。
現場で使うときには手慣れてくると、応用することができるようになります。
例えば、親和図でカテゴリごとに分けた事項を、連関図法と組み合わせて関係性を可視化することができます。他にも、問題解決策を見い出すために系統図法で事象の相関関係を整理した上で、系統図法で問題解決までの道筋を明らかにするといったことも可能です。
もちろん、QC7/新QC7つ道具以外でも有用な手法は存在しています。
例えば、50年以上も前から使われているQFD(品質機能展開)は、マトリックス形式でユーザーが求める製品像の品質特性を明らかにしたうえで、製品の機能へひも付けることにより、顧客満足度が高い製品を開発するための有用な手法があります。
ソフトウェアテストの世界では、連関図法のように原因と結果を導くためのテスト手法である、原因結果グラフが存在します。
それぞれの道具は、使い方を間違えてしまうとムダに時間を浪費するだけになってしまいますが、うまく使いこなすことができれば、コミュニケーションロスを少なくし、要求や仕様のモヤモヤが晴れて、気持ちよく製品開発できることの一助となるに違いありません。
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