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「CES2025」現地取材リポート:ウエストホール・ノースホール 編~多様化するAI活用の現場~

「CES2025」現地取材リポート:ウエストホール・ノースホール 編~多様化するAI活用の現場~

2025年1月7日~10日にアメリカ・ラスベガスで「CES2025」が開催されました。ベリサーブから参加した研究開発部員3名が、それぞれの観点から取材したリポートを3回に分けてお届けします。本記事では、ウエストホールとノースホールでの主な展示を振り返りつつ、AIがもたらすインパクトやソフトウェアテストへの影響を考察します。

「CES」について

「CES(Consumer Electronics Show)」は、毎年1月にアメリカ・ラスベガスで開催される世界最大規模のテクノロジー見本市です。今年は人工知能(AI)、デジタルヘルス、自動車技術と先進モビリティなどをテーマに開催されました。世界各国・地域から約4,500社が出展、14万1千人以上の来場者(昨年比+3千人)と6千人を超えるメディア関係者が集まりました。

ウエストホールの様子

ウエストホールはソニー社・ホンダモビリティ社の「AFEELA」といったモビリティ中心の展示、ノースホールはAIに関するまとまった展示があるエリアです。AI技術の進化が一段と加速し、モビリティから産業機械、一般ユーザー向けソリューションまで多彩な分野で革新的な製品が公開されていました。

会場地図
会場地図

ソニー社・ホンダモビリティ社:「AFEELA」

ウェストホールで注目を浴びていた展示が、ソニー社とホンダモビリティ社が共同開発を進めるEVブランド「AFEELA」です。CES2024でも展示され、開発中のさまざまな機能が紹介されていましたが、CES2025のプレスカンファレンスで「AFEELA 1」として2026年に発売すると正式に発表され全貌が明らかになりました。注目される機能面としては従来の車の概念を塗り替えるほどAIが深く統合されており、Vision Transformerを活用したレベル2+からレベル3相当の自動運転機能や、Microsoft Azure OpenAI Serviceによる対話型エージェントが搭載されているのが特徴です。

とりわけ、運転支援や安全性の向上だけでなく、車内でのパーソナライズされたエンターテインメントや情報サービスが提案されており、「移動する生活空間」としての価値創造が期待されています。

「AFEELA」全体の外観
「AFEELA」全体の外観
「AFEELA」のコックピット部
「AFEELA」のコックピット部

スズキ社:バスと電車の中間となるモビリティ「Glydways」

同じくウェストホールで注目を集めたのが、スズキ社が発表した電動シャトルバス「Glydways」です。Glydwaysは地方都市での新しい移動手段として注目されており、専用レーンを走行し、自動運転技術で運行されるため、タクシーのように呼んで利用できます。最大4人が乗れる小型の車両は、無駄なエネルギー消費を避ける設計で、渋滞の緩和にも貢献します。運転席がなく、車内には自転車を収納するスペースもあり、異なる移動手段を組み合わせた柔軟な移動が可能です。低コストで専用レーンの整備ができるため、特に交通インフラが不十分な地域での導入が期待されています。

「Glydways」全体の外観 かなりコンパクトなサイズでした
「Glydways」全体の外観 かなりコンパクトなサイズでした
スズキ社のコンセプトである「小少軽短美」 分かりやすく  メッセージ性の強いコンセプトが良いですね
スズキ社のコンセプトである「小少軽短美」 分かりやすく メッセージ性の強いコンセプトが良いですね

ウエストホールのまとめ:モビリティ革命と安全性

「AFEELA」や「LYDWAYS」のような新しいモビリティは、ドライバーにとっての「快適性」と「安全性」を高水準で両立しつつ、移動中の体験そのものを変革します。しかし、AIなどの高度な技術が搭載されるにつれ、ソフトウェアの信頼性や品質を担保するテストの重要度は増加していきます。このためテストの効率を高めると同時に、開発チームの負担を軽減できるツールも並走して高度化することが求められていると感じました。

ノースホールの様子

ESTsoft社:自然な対話が可能な「AIヒューマン」

ノースホールでは、人間のように自然な会話と表情を再現する「AIヒューマン」が来場者を驚かせていました。メインプロダクトである「PERSO.ai」は、AI技術を活用し、カスタマイズ可能なバーチャルヒューマンを制作できるプラットフォームです。ユーザーは、AIヒューマンの外見や声、動作を自由に選択でき、TTS(Text-to-Speech)やSTF(Speech-to-Face)技術を使用して自然な動画を生成します。また、多言語対応やフルHD動画での表示などが可能で、今後の教育やカスタマーサービス、エンターテインメント分野での活用が期待され、人間とAIが共存する新しいコミュニケーション形態を示唆しています。

「PERSO.ai」の画面 何の 違和感も ない「人」でした
「PERSO.ai」の画面 何の 違和感も ない「人」でした
「PERSO.ai」の設定画面 今後さまざま なバーチャルヒューマンが社会に登場してきそうです
「PERSO.ai」の設定画面 今後さまざま なバーチャルヒューマンが社会に登場してきそうです

UDMTEK社:AIベースのメンテナンス自動化システム

産業分野で大きく脚光を浴びていたのが、UDMTEK社のAIを活用したメンテナンスシステムです。MLP(Machine Language Processing) と呼ばれる、コントローラー間の言語変換を可能にし、既存のAIソリューションでは難しかった制御システム間の統合と性能向上を実現できます。この技術により、より高度な制御技術を必要とするアプリケーションにおいて、効率的なエンジニアリングサービスを提供できます。

当製品を活用し、リアルタイム監視から、異常検出・予防保守まで一元管理することで、設備のダウンタイムを最小化できるので、大規模インフラや製造工場などでは特に導入メリットが大きいとみられます。

MLP技術は、既存のAIソリューションでは対応が難しい複雑な制御領域の品質保証を前進させる可能性があると感じました。ベリサーブをはじめとするソフトウェア品質保証に携わる事業者がこのMLP技術を活用することで、多様なコントローラー環境を統合的にテスト可能にし、プロセスの効率化・自動化といった面での貢献を果たせそうです。

MLPの概要画面
MLPの概要画面
MLPの分析観点の紹介スライド
MLPの分析観点の紹介スライド

BI MATRIX社:データ分析の民主化

BI MATRIX社が紹介したのは、AIによる自動分析と自然言語でのクエリ機能を兼ね備えたデータ分析ツール「G-MATRIX」です。
この製品のAI技術を活用した生成BIソリューションで、ユーザーの自然言語による質問に基づき、データベースから必要なデータを抽出・分析し、視覚的に結果を提供します。
データベースの構造やSQLの知識がなくても、自然言語処理によるクエリ自動生成、ユーザーに最適な結果画面の提示、複数のデータベースと連携した高精度な分析が可能になります。また、データサイエンスの専門知識がなくても簡単に使えるインターフェースにより、ビジネス部門や一般ユーザーが自ら分析を行えるようになるため、組織全体でのデータ活用が加速しそうです。

「G-MATRIX」の実画面  画面下部で質問すると、 画面上部で結果が出力されます
「G-MATRIX」の実画面  画面下部で質問すると、 画面上部で結果が出力されます
「G-MATRIX」のクエリ生成AI(イメージスライド)
「G-MATRIX」のクエリ生成AI(イメージスライド)

ノースホールのまとめ:テスターの役割とAI時代

ノースホールで見られたAI技術は、ユーザーインターフェースの在り方やビジネスオペレーションを根本から変える可能性を持っています。AIヒューマンのような高度な対話システムをテストするには、従来の機能テストだけではなく、人間らしさの再現度を考慮した新たなアプローチが必要です。また、UDMTEK社のメンテナンスやBI MATRIX社のデータ分析が示すように、AIによる自動化が進むほど、テスターや開発者はより戦略的思考が求められる段階へ移行していくと考えられます。

終わりに

CES2025のウエストホールでは、モビリティをはじめとするさまざまな分野でAIによる大きな変化の波を感じました。特に、「AFEELA」や「LYDWAYS」のような最新技術を搭載した、これまでとは違うモビリティが登場し、並走してソフトウェア品質を高める必要性が高まっていると感じます。

また、イーストホールではESTsoft社のAIヒューマン、UDMTEK社の産業用AIメンテナンス、BI MATRIX社の現業担当者が必要なデータを直接照会・分析するデータ民主化が示すように、AI活用は「いかに人間の生活や業務を豊かにするか」という視点でますます広がっていくと考えられます。

今後、AIがより深く社会に浸透するのに伴い、プライバシーやセキュリティ、倫理性などの課題が一層浮き彫りになるはずです。ソフトウェアテストの分野でも、AIの判断根拠を検証する“説明責任”や偏りを排除する“公平性テスト”など、新たな視点が導入されると思われます。

最終的に、人間とAIがそれぞれの強みを生かして協調し、社会全体の課題を解決していくことこそが次世代のイノベーションを支える鍵となります。CES2025は、その可能性と同時に課題も浮き彫りにした場であり、これからの技術・ビジネス開発に向け、多くの示唆が得られる機会になったと言えます。

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