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「QAエンジニアはいらない」は早計。必要性や将来性、アメリカの動向を解説

「QAエンジニアはいらない」は早計。必要性や将来性、アメリカの動向を解説

「QAエンジニアはいらない」という言葉を見かけて、不安や憤りを感じた人は少なくないはずです。そのような言葉の多くは、職務内容への誤解を起点にしています。

この記事では「いらない」と言われる背景から、QAエンジニアの本来の価値と将来性まで順を追って解説します。

「QAエンジニアはいらない」と言われる理由

「QAエンジニアはいらない」という評価は、主に二つの誤解(図表1)が重なって生まれています。テスターとの混同と、単純作業という先入観です。

それぞれの構造を確認することで、評価の実態が見えてきます。

図表1:QAエンジニアに対する二つの誤解
図表1:QAエンジニアに対する二つの誤解

テスターとの混同

「QAエンジニアはいらない」と言われる最大の原因は、テスター(手動テスト実行者)とQAエンジニアの混同にあります。

テストの現場では、QAエンジニアとは別に、テスターと呼ばれるテクニシャンがいることが多くあります。

テスターは、すでに作成されたテストケースに従ってテスト対象のソフトウェアを手動で操作し、不具合が見つかればそれを記録・報告することが主な役割です。

一方、QAエンジニアはテスト戦略の立案、品質基準の設計、開発プロセス全体への品質の組み込みなど、品質にまつわるさまざまなプロセスを担います。そのため、両者は役割も責任範囲も全く異なるのです。

AIや自動化ツールがテスト実装やテスト実行を代替できるようになり、「テスターは不要になる」という議論が高まりました。そういった議論がそのままQAエンジニア全体に波及し、「QAエンジニアも不要」という誤ったイメージで語られることにつながったようです。

しかし、テスト自動化の設計・運用・保守を担うのもQAエンジニアであるため、AIの活用によって仕事が無くなるどころか、求められるスキルの幅は、質と量両方に広がっているのが現状です。

単純作業イメージ

もう一つの誤解は、QAの仕事が「テストケースに書かれた通りに手動でテスト実行を繰り返す単純作業」というイメージです。このイメージから「年収が低い職種」と見なされることがありますが、本来のQAエンジニアに求められる技術水準はその認識と大きくかけ離れています。

実際、国際的なソフトウェアテストの資格認定であるISTQBで基礎レベルと位置付けられているFoundation Levelのシラバス(JSTQB日本語訳)では、テスト担当者に以下のようなビジネスアウトカム(BO)が期待されています。

テスト担当者は、次のビジネス成果を達成できる。 

FL-BO1 テストとは何か、なぜテストが有効なのかを理解する。 

FL-BO2 ソフトウェアテストの基本的な概念を理解する。 

FL-BO3 テストのコンテキストに応じて、実施すべきテストアプローチと活動を識別する。 

FL-BO4 ドキュメントの品質を評価し、改善する。 

FL-BO5 テストの有効性と効率性を向上する。 

FL-BO6 テストプロセスとソフトウェア開発ライフサイクルを一致させる。 

FL-BO7 テストマネジメントの原則を理解する。 

FL-BO8 明確で理解しやすい欠陥レポートを記述して伝える。 

FL-BO9 テストに関わる優先度や労力に影響を与える要因を理解する。 

FL-BO10 クロスファンクショナルチームの一員として働く。 

FL-BO11 テスト自動化に関するリスクと利点を知る。 

FL-BO12 テストを行うために求められる必要不可欠なスキルを識別する。 

FL-BO13 リスクがテストに与える影響を理解する。 

FL-BO14 テスト進捗と品質を効果的にレポートする。 

出典:テスト技術者資格制度 Foundation Levelシラバス Version 2023V4.0.J02 

 このように、現場のQAエンジニアにはテストプロセス活動を行うだけでなく、品質を実現するための“判断・分析・調整・改善”を行える能力が求められているのです。

QAエンジニアについては、「いらない」以外に「きつい」の声も

QAエンジニアへの間違った評価は「いらない」だけではありません。正直なところ、現場で働く人たちからは「きつい」という声も聞かれます。その多くは、単に業務量が多いということだけではなく、開発チームとの日常的なやり取りの苦労から生まれることもあるようです。

QAエンジニアの仕事で特に心理的な負担になりやすいのが、開発チームへの不具合報告でしょう。

リリース直前に重大なバグを発見した場合、その事実を開発者に伝える役割を担うのはQAエンジニアです。開発者側からすれば、自分が書いたコードの欠陥を指摘される場面であり、受け取り方によっては摩擦が生じることもあります。 

プロダクトリリースに対する品質基準のすり合わせも、難しい局面の一つです。

「この動作は仕様か、バグか」の線引きを巡って、QAと開発・企画の間で意見が割れるケースは珍しくありません。QAエンジニアはその調整役を担いながら、最終的な品質の判断にも責任を持つ立場にあります。このためリリースにおける関係者(ステークホルダー)との調整役も担うことが多いです。言い換えると、関係者から歓迎されにくい「悪い知らせを届ける役」を引き受けることが多く、それが「きつい」という感覚へつながりやすくなるのです。

こうしたQAエンジニアの役割における困難さは、QAという職種の価値と表裏一体でもあります。不具合を指摘できる立場にあるからこそ、プロダクトの品質を守る役割が果たせるのです。

「きつい」と感じやすい業務特性は、同時にQAエンジニアが組織の中で果たす役割の大きさを示してもいます。QAエンジニアは、品質のエキスパートとして開発の中で重要な役割を持つ一方、技術的にも高いスキルが求められます。つまり、それだけ「やりがい」がある役割でもあるのです。

「QAエンジニアはいらない」は誤り

市場の実態を見ると、QAエンジニアへの需要は縮小どころか拡大しています。

専門性の高さが年収にも反映されており、「いらない」という誤った評価は現状と大きくずれています。

国内大手企業での品質保証需要の高まり

実際、アジャイル開発の普及とDX推進を背景に、国内大手企業でのQA専門人材の採用が増えています。

IPAのDX白書では、アジャイル開発チームにおける品質保証担当の役割として、テスト駆動開発(TDD)や継続的インテグレーション(CI)のリードが明記されています。こうした役割を担える人材は、開発組織の中でも希少な存在です。

出典:DX白書2023 第5部 DXを実現に向けたITシステム開発手法と技術|IPA 

大規模プロジェクトでは、リリース後の不具合が事業の成否に直結するため、品質保証プロセスを専任で管理できる人材の価値が高まっています。

単なるテスト実行の役割を超えて、プロダクトに対する品質全体を統括し、そのためのさまざまな活動を主導するエンジニアとして、求人市場での需要は続いています。

専門スキル習得が生む年収水準の変化

QAエンジニアの平均年収は、エンジニア職種の中でも中上位に位置します。

厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)の給与データによると、幅広いテスト担当者を含む「デバッグ作業(職業別名:デバック技術員、デバック作業員、QA(Quality Assurance)テスター、QAエンジニア、ゲームテスター)」としての年収は、578.5万円です(全国)。

出典:デバッグ作業 - 職業詳細|職業情報提供サイト(job tag)- 厚生労働省

一方、QAエンジニア社員が多く在籍するベリサーブの平均年収は681万円(2025年度)であり、業界平均よりも高い水準にあると言えます。

出典:マイナビ2028-(株)ベリサーブ(SCSKグループ) 

また、QAエンジニアはAIを活用したテスト自動化や、プロダクトに対する要求品質を満たすためのプロセスマネジメントといった専門スキルを持つため、そのスキルの幅に応じて年収帯が大きく変わります。求人市場でも、テスト自動化ツールの活用経験や品質マネジメントプロセスの構築実績を持つ高度人材は、年収800万円以上の人も珍しくなく、より高い条件で採用される場面が増えています。

スキルの幅や、その高さが処遇に直結する構造は、前述した市場需要の高まりとあわせて考えると、QAエンジニアの将来性をも裏付けていると言えるでしょう。

アメリカや大手企業の動向から見るQAエンジニアの将来性

日本では「QAエンジニアはいらない」という声が一部に存在しますが、アメリカ大手IT企業や世界市場を見ると、全く異なった景色が見えてきます。

Googleは早くからSET(Software Engineer in Test)という専門職を設け、テストに関わるエンジニアをソフトウェア開発の中核に位置付けてきました。

品質保証を「後工程のチェック作業」としてではなく、「開発を支える独立した技術領域」として扱うこの姿勢は、アメリカ大手IT企業に広く浸透しています。

出典:How Google Tests Software - Part Seven | Google Testing Blog

世界のソフトウェアテスト市場は2026年に約544億ドルへ達し、2031年には約999億ドルまで拡大すると予測するレポートもあります。年間成長率は約12.9%で、需要の伸びは数字にも明確に表れています。

出典:Software Testing Market Size, Share & Growth Trends 2031 | Mordor Intelligence

Capgeminiが発行する「World Quality Report 2023-24」でも、DevOpsや継続的デリバリーの普及によってQAの役割がさらに重要になっていると指摘されています。

縮小どころか、開発プロセス全体での活躍が期待されるようになっているのが現状です。

出典:World Quality Report 2023-24 | Capgemini

失敗しないQAエンジニア求人の選び方

QAエンジニアとして転職する際に確認すべき項目は、開発職の求人とは異なります。

業務範囲と評価制度の2点を事前に押さえておくだけで、入社後のミスマッチをかなり防げるはずです。求人を見極める特徴を図表2に簡単に整理しましたので、参考としてください。

確認項目

良い求人の特徴

注意が必要な求人の特徴

業務内容

・開発組織においてプロダクト品質全般に責任を持つ立場であることが明記されている
・求められている技術スキルが明記されている

・手動での「テスト実行」と「バグ報告」のみが求められている
・技術スキルがなくてもできる作業であるとされている

評価制度

QAエンジニアとしての評価軸・キャリアパスがある

次のキャリアパスが開発エンジニアとなっているか、記載が無い

チーム構成

開発組織におけるQAエンジニアの役割と位置付けが明らかとなっている

開発組織の中でデバッグ作業を行う一担当とされている

図表2: 良い求人と注意が必要な求人の特徴

あわせて読みたい:【連載】冒険者の地図:高卒エンジニアからメガベンチャーのリーダー職に、国内屈指のQAエンジニアに上り詰めた河野哲也さんの逆転人生(前編)

QAエンジニアへの転職を検討中のあなたへ

「QAエンジニアはいらない」という言葉は、テスターとの混同や単純作業というイメージから生まれた誤解です。市場の実態はむしろ逆で、品質保証の専門家を求める企業は着実に増えています。

本記事を通じて見てきたように、QAエンジニアへの需要は国内外で拡大しており、テスト自動化や開発プロセス構築まで担える人材の価値は年々高まっています。「きつい」と感じやすい局面があることも事実ですが、それは職種の本質ではなく、職場環境や業務範囲の定義次第で大きく変わります。

転職を検討するなら、求人票で「QAエンジニア」と「テスター」の業務が混在していないかを確認するところから始めるのが現実的です。

前項で触れた業務範囲と評価制度の二点を軸に求人を絞り込めば、入社後のミスマッチはかなり防げるでしょう。

品質保証という役割は、ソフトウェア開発の信頼性を支える仕事です。誤解に引きずられず、自分の目で市場の実態を確かめた上で判断してください。

また、HQW!では、「キャリア」カテゴリの連載記事「冒険者の地図」にて、現在活躍されているQAエンジニアのキャリアを紹介していますので、ぜひ参考にしてください。 

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