Technical Information

モノづくり・コトづくり改革を支える品質保証
- ConTrackによるプロセス整備と構成管理の実践事例

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ベリサーブが提供する「ConTrack」は、要求管理や構成管理、変更管理などの機能を持つトレーサビリティ管理ツールです。開発ドキュメントの複数の成果物を文書や項目の単位でトレースし、開発プロセスの見える化や抜け漏れの防止に寄与します。また、ExcelやWordなどのファイルを加工せずに登録できる独自の文書解析エンジンを搭載しており、既存の開発プロセスを維持しながら導入できます。

ダイハツ工業株式会社様では、大規模開発におけるプロセス整備や構成管理にConTrackを導入され、開発現場の品質保証と作業効率の改善に役立てられています。本講演では、ConTrackの導入と活用のキーマンであるダイハツ工業の西光氏をお迎えし、ConTrackの開発マネジャーで本件のサポートを担当したベリサーブの横田と共に、その概要を対談形式でお届けします。


※この記事は、2025年10月に開催した『ベリサーブ モビリティ イニシアティブ 2025』の講演を基にした内容です。

西光 優 氏

ダイハツ工業株式会社
ソフトウェア開発部
グループリーダー
西光 優 氏 

横田 浩行

株式会社ベリサーブ
ConTrack事業部 開発課
課長
横田 浩行 

湊 孝太郎

聞き手:
株式会社ベリサーブ
西日本営業部 第一課
湊 孝太郎 

ConTrack導入前の課題

―ConTrack導入前の課題について教えてください。

西光  それまで成果物の管理はExcelをメインに用いておりましたが、Excelの管理帳票自体にメンテナンスが必要になるため作業効率が非常に悪く、時にはチェック漏れを起こすこともありました。また、機種ごとのプロジェクトが立ち上がるたびに新たなExcelの帳票が出来上がるため、管理のための管理が次々に増えていくという状況に陥っていました。

さらに、弊社ではコード査読、いわゆるウォークスルーでオフラインレビューをするようなケースが多いのですが、該当のコードがどの仕様にひも付いているのかをレビューアが探し出すのに非常に手間と時間がかかっていました。過去にそのプロジェクトを担当した人ならコードと仕様の関係性もすぐに理解できるのですが、担当が変わると探すのが困難になるというチェックの属人化も問題になっていました。

―そうした状況を改善しようとしたきっかけは何だったのでしょうか。

西光  一番の大きな動機は、機能安全規格であるISO 26262への対応です。後続の機種開発を規格に準拠させることを考えると、作業ミスを極力減らすことが重要になります。そのためには、プロジェクトを一元管理できるような構成管理プロセスを確立する必要があり、専用ツールの利用が不可欠になると考えました。

横田  Excelによる管理の問題は、業界・業種を問わず大きな課題になっています。自動車関連では徐々に専用ツールの導入が進んできていますが、全業種で見ると9割以上のプロジェクトが今もExcelでトレーサビリティ管理を実施している状況です。

実際のところ、ごくシンプルで機能点数が少ない場合ならExcelでも対応は可能です。しかし、最近のシステムや製品は機能数が多い上、サブシステムも増えて依存関係がより複雑化しているため、Excelでの管理には限界が出てきています。

西光  人間が行う作業である以上、必ずミスは起きてしまうものですが、少しでも減らすには効率化と改善が必要です。システムが巨大化し管理する項目も急激に増加する中、このままExcelでの管理を続ければ、いつかは破綻することは確実で、できるだけ早く手を打つべきと判断しました。

ConTrack導入の経緯

―ConTrackを選定した理由について、他社ツールとの比較なども含めて教えてください。

西光  ツール選定に際しては、複数ベンダーの製品に対する厳密なベンチマークを実施しました。ツールというのは実際に使ってみないと作業イメージが湧かないのですが、あるツールでは購入後でないと使用できない、あるいは試用版には機能制限がある、複雑な契約が必要ですぐには検討に着手できないなど、さまざまな制約に苦労させられました。その点、ConTrackは一定期間であれば機能制限もなく自由に試用することができたので、結果的にはこれが最も大きな選定理由になったと思います。

横田  ここは私たちが本当に大事にしている部分で、機能も使い勝手も分からないという状況で社内の決裁を通すのは非常に困難だと認識しています。決して押し売りにならないよう、ConTrackをありのままに使ってみていただくことで導入のハードルを下げたいというのが私たちの思いです。ここを評価していただけたのは、大変うれしく感じています。

―ConTrackを実際に使ってみて、良いと感じたポイントはどこでしょうか。

西光  幾つかありますが、まずは既存のドキュメントがそのまま使えること。また、使ってみた印象としては、ファイルを単純にインポートするだけで簡単にタグとなる項目が自動抽出できることや、承認・未承認などのステータスの管理ができること。さらに、一番大きかったのは変更のインパクトの調査が明確に可視化されていて、直感的で非常に分かりやすいという点です。

―ダイハツ様ではConTrackの導入に当たってPoCからスタートしていますが、その決め手は何だったのでしょうか。

西光  まず、サポートが非常に手厚かったことが挙げられます。当然、弊社には既存の開発プロセスがあったわけですが、そこにしっかりと合わせる形で仕組みを提案していただけました。ツールの仕様をゴリ押しするのではなく、従来のプロセスに寄り添う形で対応してもらえたことが一番大きかったと思っています。

また、実際に試用してみると、導入までの工数が少なく済みそうだという印象を持ちました。ベンチマークに当たっては特に汎用性を意識していたのですが、他社製品ではツール側の変更が必要になる場面も多かった一方、ConTrackに関してはスムーズに利用することができたと感じています。

横田  組織が持つ既存の開発プロセスというのは非常に大事だと考えています。今の開発プロセスが存在しているのは何らかの理由があり、それを尊重するのがツールベンダーとしての第一歩だと思います。

この種のツールは開発プロセスの中心に組み込まれていくものなので、ツールの仕様にプロセスを合わせるという考え方をしてしまうと、既存のやり方に慣れた方々が拒否感を抱く可能性があります。ツールに対してアレルギーを感じ、使い勝手に疑問を持つと、結局は定着・導入がうまく進みません。そのため、どうすればConTrackの機能が既存のプロセスに適応できるのかを私たちも常に模索していて、今回の提案でもそこを重要視したことが、ダイハツ様に認めていただく結果につながったと考えています。

導入プロセスと工夫

―PoC後にConTrackの本格導入に至った理由や評価ポイントなどを教えてください。

西光  まず、ツールとしての動作がサクサクと非常に早いこと。また、先に話した通り、タグの抽出や文章の解析エンジンが賢いという点も非常にメリットを感じました。さらに、他社製品と比べてかなり低価格であったこともポイントの一つです。

横田  今回、導入支援という立場から過去の経験に照らし合わせてみても、ダイハツ様ではConTrackを非常にうまく使っていただいていると感じています。その理由を自分なりに考えてみると、このツールを開発プロセスの中でどのように使っていくかという方針をしっかりと定めていて、手順の部分まで落とし込んでいたという点が特徴的だったのではないかと思っています。

ツールが万能であるかのように考え、導入すればそれで良いという極論に走るお客様もいないわけではありませんが、それに対しダイハツ様は、自社のエンジニアリングへどのように組み込むのかが明確に整理されていました。これによって担当の方がConTrackを上手に使い続けることができるようになり、その過程でさまざまなメリットに気付かれた結果、使える局面や使い方の幅も広がっていったように思います。

西光  この点に関しては、導入前の段階でベリサーブさんとの間で丁寧な会話があったたことが一番大きかったと思います。既存のプロセスを詳細に説明した上で、これを維持したままConTrackをどう組み込んでいくかを提案してもらえたことが、スムーズな導入につながったのだと感じています。

横田  私たちもツールを押し付ける形では結局使ってもらえないということは経験上理解していたので、導入のために変えられる部分と譲れない部分を、担当の方々と膝を突き合わせてじっくりお話ししました。

また、導入に当たっての工夫として、ダイハツ様では二段階のフェーズを考えていて、まずは既存のプロセスにConTrackを少しだけ追加してトレーサビリティを取ってみる。これで使い方がうまく定着したら、次に開発プロセスの中にConTrackをしっかり組み込むにはどうすればいいのかを考えるという流れで、これが無理のない導入に結び付いた要因であったと思います。

西光  構成管理を正しく行う上で既存のプロセスに問題があったとしたら、そこは変えるべきだと思います。しかし、ツールの導入のためだけに、それに合わせてプロセスを変更するのは私たちとしても本意ではありません。今までのプロセスを変えるというのは担当レベルでもそれなりに負荷を要するので、それを極力減らせるように綿密な対話を行いました。

導入後の効果・変化

―ConTrackの導入後、どのような効果や変化があったのでしょうか。

西光  現時点ではConTrackを導入して正式なプロセスを運用してから日が浅いため、その効果を定量的な数字として表すには至っていません。システムの導入自体はかなりスムーズに進んだという印象で、プロジェクトの成果物の登録には一定の時間がかかったものの、今後は徐々にスピードアップされていくと推測しています。

一方で、定性的な効果としては、導入前の課題として挙げていたトレーサビリティの見落としが大きく低減したと感じています。これは、成果物の作業者自身がConTrackを使ってセルフチェックができるようになったことが要因と考えています。

実はConTrackの導入効果として最も期待を寄せていたのは、私たちのような管理者が構成管理自体を可視化できるという点でした。ただ、実際に運用してみて気付いたのは、むしろ作業担当者の効率化というのが非常に大きなメリットだと感じています。例えば、仕様変更が入った時の工程へのインパクトが瞬時に確認できるといったように、変更すべき部分が作業担当者自身で把握できることにより、ミスや見落としが減少したのではないかと思います。さらに意識付けという意味からも、構成管理の大事さが身を持って実感できているのではないでしょうか。

横田  一見して派手さはないものの、各担当者の意識や目線が変わってくるというところもツール導入効果の一つで、これだけでも成果物の品質に大きく寄与できるのではないかと考えています。こうした部分にもConTrackが貢献できるという点で、今のお話は大変うれしく感じています。

―横田さん、参考までに他のお客様での導入状況や効果などについて教えてください。

横田  ダイハツ様と同じ自動車業界でもConTrackは多くのお客様にご採用いただいておりますが、あえて別分野での事例を紹介すると、大規模な公共系の社内システムでのマイグレーション案件に利用されていることが挙げられます。このお客様も以前はExcelでトレーサビリティ管理をしていて、要求の取りこぼしが実際の計測結果として3%程度あったようなのですが、これが大きく減少しました。さらに、通常は取りこぼしが見つかるのは受け入れテストのフェーズになることが多いとのことだったのですが、これが基本設計の段階で発見できているようになり手戻りの工数を大きく減らせるという結果につながっています。今後ダイハツ様での利用においても、こうした効果を実感できるようなお手伝いを続けていきたいと思っています。

ConTrackへの今後の期待

―今後のバージョンアップなども含めたConTrackへの期待をお聞かせください。

西光  構成管理という概念はソフトウェアに限ったものではないので、APIの連携でさらに広いデータ活用ができたらよいと考えています。私たちのようなOEMによる開発という立場なら、部品の3Dデータや配線仕様、回路図など、さまざまなケースで使えるのではないかと感じていて、これらとの連携が可能になることを期待しています。

横田  今のお話にあった通り、モノづくりにおけるソフトウェアというのは、機械設計なども含めた製品全体の中の重要な位置付けを占めるものと認識しています。私たちはConTrackをALM(アプリケーションライフサイクルマネジメント)と位置付けていて、これはソフトウェアの管理に特化したツールを指します。製品開発全体をサポートするツールはPLM(プロダクトライフサイクルマネジメント)と呼ばれており、3Dデータや回路図なども管理できるのですが、ファイル単品で扱うようなイメージです。一方、ConTrackはファイルの中身を分解して項目ごとに整理して管理するため、情報の粒度感がPLMとは少し異なります。ただ、これをうまく連携させることができれば、よりいろいろな局面で活用できると考えています。実際に、本来はPLMで管理するべき回路図の仕様書や配線仕様などがExcelで作られている場合も多いので、ここはConTrackが得意とする領域です。

西光  ALMやPLMという境界をあまり意識せずに、うまくその架け橋になるようなインターフェースが準備されれば、私たちとしても非常に使いやすくなるだろうと思います。 また、もう一つ私たちが悩んでいるのは、仕様書の中身が文字だけではないという点です。仕様書内には図版を使った部分も多いので、例えば図の変更差分をConTrackで抽出して比較ができるとうれしいと思っています。

横田  図に関しては、2025年に実施したバージョンアップでWordやExcelに挿入された図を画像として扱えるようになりました。また、Excelで図形を組み合わせたタイミングチャートなどを書いている場合、人間が見ると一つの絵として認識できるのですが、データレベルでは複数のオブジェクトが個別に存在している状態です。これを一個の図版として認識し、抽出することが可能になっています。 さらに、図のどこが変更されたかという差分分析も一部可能になっていますが、まだ試験的な実装にとどまっています。今後は比較の精度を上げる、もしくはAIを使って分析させるなど、順次機能強化を図っていく予定です。

西光  私たちも楽しみにしています。

おわりに

―ここまで、ConTrackの導入背景から効果、今後の期待まで、現場のリアルな声をお届けできたかと思います。この対談が開発におけるトレーサビリティ管理や構成管理を含めた、変化に強い体制づくりのきっかけとなれば幸いです。最後に、お二人から一言ずつコメントをお願いします。

西光  今回、ConTrackの導入に際して強く感じたことがあります。ソフトウェアの開発現場には保守的な部分があって、なぜ今までの管理プロセスを変えなければならないのかという意見が少なからず存在します。ただ、やはり今後の改善や効率化を考えると、重い腰ではあっても一旦はツールを導入してみるというのは非常に良いことだったと思います。実際に導入に踏み切った結果、その効果の大きさを実感できたので、一度はトライしてみるというのが大切であると感じています。

横田  この対談で、ConTrackを利用するお客様のリアルなご意見をお届けできたのは本当に良かったと思っています。今までも自分なりに理解してきたお客様の事例をさまざまな場でお伝えしてはきたのですが、あくまでも外部の人間であることから、やや抽象的でありきたりな内容になりがちでした。その点、今日はお客様ご自身から実際の取り組みや苦労話など、具体的で現場感のあるお話を聞くことができました。ご覧いただいている方々にも非常に参考になると思いますし、ツールの開発者である私自身も大変勉強になったと感じています。この対談をきっかけにConTrackに興味が湧いた、自社でも使えるかもと感じられたのなら、ご一報いただければ幸いです。

西光  ぜひ今後も、使う側に寄り添った形での提案・改善を続けていただけると非常に助かります。

横田  頑張ります。私たちとしても、現場の皆さんの声がツールとしての改善ポイントになるので、積極的にご意見をいただければ、とてもありがたいです。

―本日はありがとうございました。

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