キャリア
【連載】冒険者の地図: AI時代にどう生きるか、Ubie・浦山さつきさんが追い求めるQAエンジニア像とは?(後編)

Ubie株式会社プロダクトプラットフォーム本部 QAエンジニア浦山さつきさん
現在、Ubie株式会社でQAエンジニアとして働いている浦山さつきさん。前編では浦山さんがUbieに入社するまでに経験してきたさまざまな仕事やコミュニティー活動、さらにはそれらを通じてどのように自身のスキルやキャリアを磨いてきたかについて紹介してきた。
今回は、現在の職場でのQAエンジニアとしては一風変わった働き方や、これまでのキャリアを通じて得たさまざまな学び、さらにはQAエンジニアとして大切にしていることなどをお伝えする。
事業会社のプロダクト開発に直接関わるように
2023年6月、浦山さんはそれまで勤めていた第三者検証会社を退職し、Ubie株式会社(以下、Ubie)に転職した。Ubieは「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」というミッションを掲げ、Webアプリケーションを通じて生活者に医療情報を提供したり、医療従事者の業務を支援するアプリケーションなどを開発・提供したりする、いわゆる「ヘルステック」のスタートアップだ。この会社への転職を決意した理由について、浦山さんは次のように説明する。
「第三者検証の会社では、いろいろなお客様のシステムに対してQAの専門家として品質保証やテストの技術を提供するという立場なので、求められるスキルセットは自ずと技術寄りになります。しかし、私自身は技術を深めること以上に、自社プロダクトの開発・提供を通じて、自身が事業成長やユーザーへの価値提供に貢献できる会社で働きたいと考えていました」
あまたある事業会社の中からUbieを選んだのはなぜか。浦山さんは「社会に大きく貢献できて、しかも『これが世の中で当たり前になったら世界が変わる』ようなイノベーティブなプロダクトを作っている会社だから」と語る。
現在、Ubieではこれまでと同様、QAエンジニアとしてサービスの品質保証に関する業務を担うと共に、チームの推進役であるスクラムマスターも兼任している。もともとスクラムマスターの経験はなかった浦山さんだったが、前任者から「やってみない?」と声を掛けられたとき、「QAやテスト以外の仕事にも積極的にチャレンジしたい」と、迷うことなく引き受けたという。

Ubieでは、厳密な役割分担を設けるのではなく、事業目標の達成に向けてチームを組み、メンバーは自身の役割にとらわれず、目標達成に必要となるタスクに全員で協力して取り組むスタイルを採っている。その中でQAエンジニアは全体の品質保証戦略や方針を考え、推進したり、事業的に品質が重要なチームをリードしたりしている。浦山さんによると、QAエンジニアの役割と、スクラムを円滑に回すスクラムマスターの役割、双方ともチームを良くするという共通点があったため、すんなりと馴染むことができたという。
「このような開発の進め方はUbie特有のものなのかもしれませんが、『自分の仕事はこれだけ』といった線引きは一切なくて、事業成長のためにできることをやるという方針です。このような動き方は、いろいろなことに積極的にチャレンジしてみたいという私自身の思いとも合致しているので、とてもやりがいを感じています」
AI時代においてQAエンジニアに求められる要件とは?
QAエンジニアとして、そしてスクラムマスターとして、Ubieのプロダクト開発と事業成長に貢献している浦山さん。そんな浦山さんが仕事の中で大切にしているものの一つに、「自ら手を動かすこと」があるという。
「頭で理解したつもりでも、『知っている』のと『わかる』のとでは大きな違いがあると思います。そのギャップを埋めてくれるのが、実際に手を動かすこと。試行錯誤する中で、初めて知識が腹落ちして、『知っている』から『わかる』に変わっていく。想定外の課題や改善点も見えてくるのです。だから、どんなことでもまず自分でやってみることを大切にしています」
また、人に何かを教える立場になったとき、自分が実際に経験していないことは説得力を持って伝えられない。だからこそ、常に自ら実践することを重視しているという。
「品質保証の側面でチームをリードしていくためには、まず自分自身がその価値や具体的な手法を深く理解している必要があります。だからこそ、自分で実際に試してみて、腹落ちさせることが何より大切だと考えています」
そんな浦山さんが現在、QAの在り方を大きく変える可能性があると注目するのが、AIだ。既にUbieでは、設計レビュー、コードレビュー、コーディング、市場調査、データ分析、議事録の作成、チーム活動へのフィードバック、コーチングなど、あらゆる場面でAIが活用されている。
例えば、QAエンジニアはAIを使ってコーディングしたり、AIによる実装のガードレールとなるルールを追加したり、QAガイドの作成をサポートしてもらったりと、枚挙にいとまがない。
これから先、AI活用によってQAのみならず開発におけるあらゆる活動が変化し、とりわけ開発スピードは一層速くなることは間違いないだろう。そうした中で、QAエンジニアにはどのような役割が求められていくのだろうか。
「テストで手を動かす時間が減る分、もっと企画や計画のフェーズに深く入り込んだり、開発プロセスを最適化し、より円滑に回せるようにしたりすることが大切だと考えています。このような活動をチームの中でリードしていくことこそが、今後QAエンジニアに求められる役割なのではないかと思います」
プロのQAエンジニアだからこそ「素振り」が大事
このように変化し続ける状況に対応していくためには、常に学び続ける姿勢が欠かせない。浦山さんは、プロフェッショナルとして基礎を磨き続けることの重要性を、スポーツ選手の「素振り」に例える。
「どんな分野でも、プロとして活躍し続けるためには、基礎を反復練習する『素振り』のような地道な努力が不可欠です。それが変化に対応するための土台になりますから」
そして、その自己研鑽を続け、さらに新たな視点や刺激を得る場として、浦山さんが大切にしているのがコミュニティー活動だ。
「私は一人で黙々と作業するのがあまり得意ではありません。だから、一緒に何かをする仲間を見つけられるコミュニティーは、とてもありがたい場所でした。今でも積極的に関わっています。現在はJaSST東北の実行委員をボランティアで務めているのですが、ただの奉仕活動ではなく、やはり最終的には自分のためにならないと頑張る意味がないと思っています。まずは自分たちが学びたいことをテーマに掲げてイベントを企画・実行することで、参加者だけでなく自分たちも運営活動を通して成長する機会を作れるよう心掛けています」

今後のキャリアについて尋ねると、浦山さんは特定の職種へのこだわりはないと語る。
「私が一番大切にしたいのは、Ubieが掲げる『テクノロジーで人々を適切な医療に案内する』というミッションの実現に貢献することです。だから、QAエンジニアという肩書に固執しているわけではありません」
その上で、品質保証への関わり方について、次のように続ける。
「もちろん、品質は非常に重要です。でも、目指しているのは教科書通りの完璧な品質保証ではなくて、事業の成長にとって『最適な品質保証』とは何かを常に考え、実践していくこと。そのバランス感覚を大切にしたいと思っています」
AIの進化が働き方を変える中で、その思いはさらに強まっているという。
「AIによって、開発の在り方も、求められるスキルもどんどん変わっていきますよね。単純な作業はAIに任せられるようになる分、私たち人間は、もっと事業全体を見て、どうすればより早く、より良い価値をお客様に届けられるかを考えることに時間を使えるようになるはずです」
そして最後に浦山さんは次のようなメッセージを添えた。
「これからは職種や役割の垣根がどんどん曖昧になっていくと思います。だからこそ、特定のスキルや方法論にこだわるのではなく、『この仕事は、最終的に誰のどんな課題を解決し、どんな価値を生み出すのか』という本来の目的を見失わないことが、ますます重要になってくるはずです。常に目的から考え、視座を高く持って事業やプロダクトの価値向上に貢献しようと意識していれば、どんな技術が出てきても、きっと自分自身の価値を高めていけるのではないでしょうか」

Ubie株式会社プロダクトプラットフォーム本部 QAエンジニア浦山さつきさん
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