スキルアップ
【東京ゲームショウ2026】AIQVE ONEに聞くエンターテインメント品質の最前線

目次
本記事では、千葉県・幕張メッセにて開催された東京ゲームショウ2026のビジネスデイ(2026年9月17日)でHQW! 編集長が取材した内容をお届けします。
毎年のように多くの来場者が訪れる東京ゲームショウですが、ビジネスデイ初日から多くの人たちで大盛況でした。
たくさんの最新だったり、おなじみのゲームタイトルが紹介されたりする大型ブースもあれば、インディーゲームまで、幅広いゲームが展示されていました。
今回は、そういったゲームタイトルのブースではなく、ビジネスデイに特化したホール9内の「ビジネスソリューションコーナー」に出展した、エンターテインメント領域の品質を担うソリューションを提供しているAIQVE ONE株式会社(以降AIQVE ONEと表記します)のブースを取材しました。
読者の皆さんは、ゲームのテストといえば、どのようなことを思い浮かべるでしょうか。広いフィールドに壁抜けがないか一つずつ確かめたり、日本市場向けにローカライズされた海外ゲームの翻訳が間違っていないか確認したり、さまざまなテストがゲームメーカーでは行われています。タイトルのリリース後には、利用者からSNSに「ここでバグった」という投稿があれば、ゲームメーカーは迅速にデバッグしてアップデートを掛けなければ、ゲームの評判が悪くなり売れなくなってしまうかもしれません。
このように、ゲームの品質を考えるなら、必要となる品質保証の仕事はリリース前のテスト&デバッグだけにとどまりません。
そこで、AIQVE ONEの展示を取材し、ゲームづくりの異なる場面をつなぐ品質保証の考え方を聞いてきました。
_%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%9F%E3%83%B3%E3%82%B0%E6%B8%88%E3%81%BF.webp)
AIQVE ONEがブースで紹介した中心的な展示は、ゲームテスト自動化ツール「Playable!」とSNS監視ツール「Oreo」です。他には、翻訳や画面表示を確認するLQA(Language Quality Assurance:言語品質保証)の取り組みを紹介していました。
本取材では、こういったツールそのものをどう作り、確かめているかにも話が及びました。特に、「何を機械に任せ、何を人が判断するのか」を深堀りしました。
会場で見えたのは、品質保証の仕事の広がり
AIQVE ONEの広報担当者によると、東京ゲームショウへの出展には、製品をその場で展示・営業することだけでなく、ゲーム業界での認知を広げる狙いがあるとのことでした。ゲームで遊ぶ人にとっては完成した作品が主役ですが、その裏では、開発中の動作確認、各言語への対応、公開後の反応の把握まで、異なる種類の確認が開発全体を通して続きます。また、同じ「品質」という言葉でも、場面によって確認したいものは変わります。
例えば、キャラクターが壁を擦り抜けてしまわないかはゲーム内の動作に関する問題です。海外タイトルをローカライズしたときの翻訳後の文章に問題がなかったとしても、表示枠から文字がはみ出してしまうと、ユーザー体験に支障が出ます。公開後にこういったユーザーが見つけた不具合の訴えがSNSへ投稿されても、開発側が気付かなければ調査やデバッグを始められません。
AIQVE ONEのブースで紹介された製品群は、こうした別々の場面で、人が繰り返していた確認や情報収集を支えるものです。ただし、一つのツールが全てを解決するというわけではありません。
そこで役割に応じて、まず開発中の反復作業を助ける「Playable!3D」を、次に翻訳作業・ローカライズを助ける「Playable!LQA」、最後に公開後の声を拾うSNS監視ツール「Oreo」について開発担当者から話を伺いました。
壁を何度も確かめる作業を、「Playable!3D」はどう変えるか
3Dゲームでは、見た目は壁があるのに、キャラクターがそこを通り抜けてしまう場合があります。いわゆる“壁抜け”です。広いフィールドのあちこちで起こり得るため、人が操作して壁にぶつかり続ける確認には時間がかかります。「Playable!3D」は、このような3D空間での反復的なテストを自動化するツールです。取材時の説明では、8人分のテストを同時に自動的に進められるとのことでした。これは「8人で遊ぶゲーム専用」という意味ではありません。1人用のゲームも対象にできるとの説明でした。

ここで大切なのは、8人分同時実行できるという数字だけではありません。人が同じ操作を何度も繰り返す代わりに、ツールへ任せられる部分を切り出すことです。例えば、壁に向かって移動する動作を繰り返して確認する一方、人は結果を見て、問題の起きた場所や条件を調べることに時間を使えます。これは、工数や費用だけでなく、単純作業による担当者の負担を減らせるということです。
もちろん、ゲームの操作は壁に向かって歩くだけではありません。ジャンプやパンチといった動作についても、ツールに読み込ませてテストできます。一方、対応できないゲームのジャンルもあり、どのような作品でもそのまま自動化できるわけではありません。ですから、こういったテスト自動化ツールを導入する際には、「このゲームで、どの動作を、どの範囲まで繰り返し確認したいか」を具体的にしなければならないとのことでした。
翻訳が正しくても、画面に収まらなければ伝わらない
ゲームタイトルをローカライゼーションとして別の言語で届ける時、セリフやメニューの文章を訳すだけでは十分ではありません。訳文が長くなれば、ボタンや吹き出しに収まらないことがあります。キャラクターの位置や文字の大きさが変わり、画面の意図が伝わりにくくなることもあります。これは先に挙げたLQAの対象となります。
AIQVE ONEでは、もともと社内のLQA業務に使うために作ったツールを、顧客にも提供できる形へ広げようとしています。取材時点ではツール自体は存在するものの、SaaSとしての販売は準備中という説明でした。
取材で示された機能には、翻訳文の誤りを指摘して修正案を示すこと、画像認識を使ってキャラクターや文字の表示上の違和感を指摘するものでした。
例えば、画面からはみ出した文字は文章だけを読んでいても見つけにくい、といった問題を見つけることができます。また、訳文と実際の画面を併せて見ることで、遊ぶ人が目にする状態に近づけられるような指摘をしてくれます。
ただし、AIによる指摘が正しいかどうかは別の問題です。修正案は、そのまま採用するのではなく、作品の文脈と画面上の見え方をローカライゼーションの担当者が確かめる必要があります。

さらに、文化的な配慮が必要な表現を確認する「リファレンスチェック」という作業もあります。
具体的には、ある画像や表現が対象地域で適切かどうかは、国名だけで機械的に決められるものではありません。そこで地域、作品の設定、受け手、適用される規則などを踏まえた判断が必要になります。ただし、こういったLQAを支援するツールは、懸念箇所を探す助けになっても、文化的な妥当性や法的な適否を保証するものではありません。だからこそ、人がツールをうまく使いこなして、品質に関わるジャッジは人が行わなければならないことを説明では強調されていました。
この説明から、品質保証の対象が「コードに不具合がないこと」だけではないと教えられました。ゲームをする人がストレスなく読めるか、意図が伝わるか、不用意な表現になっていないか。そうした問いを、翻訳文と画面の両方から考える仕事があるということを知ることができました。
発売後の「声」を見逃さない。Oreoが拾うもの
ゲームタイトルを公開後、ゲームユーザーの反応は問い合わせ窓口だけに集まるわけではありません。SNSへの投稿や動画でのコメントなど、開発チームが直接受け取らない場所にも感想や不具合の訴えが書き込まれます。
Oreoは、そうした投稿を自動的に収集し、関係者へチャットで通知するSNS監視ツールです。人が検索を繰り返して投稿を探す作業を、ツールで支援します。

ゲームユーザーによるSNSへの投稿には「動かない」というネガティブな指摘だけでなく、「この演出が良かった」というポジティブな感想もあります。
Oreoはこういった肯定的な意見も収集できるそうです。
つまり、不具合の兆候を早く見つける用途に加え、どの体験が評価されているのかを開発チームが知る手掛かりにもなります。ただし、SNS上の投稿は利用者全体の意見を代表する調査結果ではありません。だからこそ、投稿の真偽や発生条件を確かめずに、直ちに不具合や多数意見と決め付けることは避けるよう、ツールの運用では注意が必要になります。

Oreoは当初、開発者やエンジニア向けに考えられていたものの、マーケティング、商品開発、広報にも用途が広がっていると言います。
開発者は不具合の再現調査につながる声を、企画担当者は使い勝手に関する声を、広報担当者は情報発信への反応を、それぞれの目的に沿って見ることができます。
同じ投稿でも、何を知りたいかによって読み方は変わります。SNS上の声を自動的に収集した後に、どの声を確認し、誰が判断するかを決めておくことが大切でしょう。
AIで作るツールを、どう確かめるのか
自動化ツールを紹介すると、次の疑問が浮かびます。そのツール自体の品質は、誰がどのように確かめるのでしょうか。
本取材でAIQVE ONEの山崎社長は、自社を単なるツール販売会社とは捉えていないと話されました。

それは、顧客に届けたいのは品質に関する価値であり、ツールはその提供方法の一つだと、考えているからです。共通する課題にはSaaS型のツール提供で、ゲーム開発企業による個別の要望にはソリューションとして対応されているそうです。
AIQVE ONEの開発現場では、AIを活用してまずツールを作り、実際に触って確かめているとのことです。
「Playable!」の開発では、機能ごとのテストを行いながら、ツールを使うゲームの開発に携わる人たちが「やりたいことをちゃんとできるか」を重視していると言います。品質を考える対象が、ゲーム本体から、品質保証を支える道具へともう一段広がっています。
AIを使った開発では、生成されたコードの形が毎回同じとは限りません。そこで、目的の動作が実現できているかを確かめ、操作が重いと感じた場合にはメモリーなどの問題を洗い出し、AIにも修正を指示しているそうです。これは「コードを見なくてよい」「AIが作ったものは安全」という意味ではありません。取材で確認できたのは、利用者の目的と実際の動作を照らし合わせ、気付いた問題を調べて直すという、同社の開発現場での進め方でした。
開発担当者自身も、AIが返した答えをうのみにせず、自分で考えて次の指示を出すことを意識しているそうです。AIが作業を担うほど、目的を言葉にし、出てきた結果を確かめる力が重要になります。ゲームをテストするツールの開発にも、ゲームのテストと同じく、使う人の視点を大切にして開発を進められていることを知ることができました。
まとめ
東京ゲームショウ2026での取材から見えてきたのは、ゲームの品質を一つの工程に閉じ込めない考え方です。「Playable!3D」は、広い3D空間で繰り返す確認を助けます。LQAの取り組みは、翻訳文だけでなく画面上の表示や文化的な配慮にも目を向けています。「Oreo」は、公開後に利用者が残した投稿に気付く手段を提供します。それぞれが扱う対象も、導入時に確認すべき制約も異なります。
共通しているのは、機械に任せる範囲を見極め、人が目的と結果を確かめることです。壁抜けの確認を速めても、全ジャンルを自動で検証できるわけではありません。翻訳や文化的な表現の指摘があっても、最終的な判断は文脈を踏まえて人が行う必要があります。SNS上の投稿を集めても、それだけで利用者全体の評価は分かりません。
テスト自動化を「人の仕事をなくす仕組み」ではなく、「人が確かめるべきことに向き合うための仕組み」として使う。その視点こそ、ゲーム以外のソフトウェア開発にも持ち帰れる学びではないでしょうか。
AIQVE ONE株式会社: https://www.aiqveone.co.jp/
テスト自動化ツール「Playable!」:https://aiqveone-qa.studio.site/
SNS監視ツール「Oreo」:https://www.aiqveone.co.jp/oreo/
この記事は面白かったですか?
今後の改善の参考にさせていただきます!





































































-portrait.webp)






























